eぶらあぼ 2016.5月号
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50クリスチャン・ヤルヴィ(指揮) 東京都交響楽団2大現代作曲家の対照する世界観文:オヤマダアツシクシシュトフ・ウルバンスキ(指揮) 東京交響楽団ロシア音楽の“華麗さ”と“情動を揺さぶる歌”文:江藤光紀第807回 定期演奏会 Bシリーズ5/18(水)19:00 サントリーホール問 都響ガイド03-3822-0727 http://www.tmso.or.jp第640回 定期演奏会5/28(土)18:00 サントリーホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jp第95回 新潟定期演奏会5/29(日)17:00 りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館問 りゅーとぴあチケット専用ダイヤル025-224-5521 http://www.ryutopia.or.jp 父ネーメ、兄パーヴォはもちろんだが、クリスチャン・ヤルヴィを忘れていただいては困ります。ドイツのMDRライプツィヒ放送交響楽団をはじめ、世界中の主要オーケストラを縦横無尽に指揮しながら刺激的な音楽を生み出している彼の姿は、ときに父や兄よりも過激に、そして現代的に映るかもしれない。 しかし彼もまたヤルヴィ家の一員だった。同じエストニア出身の作曲家であるアルヴォ・ペルトの音楽を愛し、作曲者自身からヒントを与えられながら多くの作品を指揮しているのだ。都響の第807回定期演奏会では、代表作といえる「フラトレス」、そして前衛的な手法から脱却しつつ独自の作風へと向かった初期の作品といえる「交響曲第3番」を取り上げる。息を潜めて感じるようなペルト特有の音楽は、都会の喧噪へのアンチテーゼとしてホールに響くことだろう。 そして、ペルトの曲とはまったく異な 東響の5月定期は、ポーランドの実力派、クシシュトフ・ウルバンスキが登場する。この人、インディアナポリス響やトロンヘイム響でポストを持つだけでなく、ベルリン・フィルをはじめとする世界の名門オーケストラでのデビューも相次いでおり、才能続出・激戦の続く30代指揮者の中でじわじわと評価をあげている。スコアを深く読み(暗譜も得意!)、きっちりとバランスを作って運んでいくタイプで、オーケストラを掌握する緻密なリード力が人気の秘密だろう。 今回のプログラムはロシアもので筋を通しているが、趣きの異なるコンビネーションだ。プロコフィエフ「ピアノ協奏曲第3番」は、モダンな書法で極彩色の世界が繰り広げられる。巨大オーケストラを整えるあたりはウルバンスキの得意分野だし、東響も端正で美しく鳴るオケだ。独奏のアレクサンドル・ロマノフスキーは貴公子然としたピアニストで、その演奏は情熱の中に気品を感じさせる。しかも年齢も出身地(ウる運動性・グルーヴを生み出し、聴いていると身体がリズムをとってしまうスティーヴ・ライヒの音楽も、クリスチャンが得意とする作品だ。特に「フォー・セクションズ」は日本初演であり「弦楽器」「打楽器」「木管&金管楽器」「フル・オーケストラ」という4段階の流れをもつ曲だけに、演奏するオーケストラのスキルが問われる難曲である。ペルトと併せ、都響との演奏によってこそ生み出される現在進行クライナ)もウルバンスキと近い。歯車をかみ合わせるように運びつつ、熱量の高い協奏が繰り広げられるだろう。特に息の長い結尾部では目くるめくシークエンス展開を期待したい。 後半はチャイコフスキー「交響曲第4番」。やはりダイナミックな曲だが、プ形の音楽は、東京という都市にふさわしい。聴かず嫌いはもったいない一夜なのだ。ロコフィエフが錦絵のような華やかさだとすれば、こちらは暗い情動を揺さぶる深い歌が根本にある。東欧出身のウルバンスキはスラヴ系のレパートリーも得意としているが、この作品の悲劇性をどう描出するかというあたりに、前半とは違った顔が現れてくるだろう。クリスチャン・ヤルヴィ ©Peter Rigaudアレクサンドル・ロマノフスキークシシュトフ・ウルバンスキ ©Fred Jonny

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