eぶらあぼ 2016.5月号
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47アンドレア・バッティストーニ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団若き名匠とともに、イタリアの管弦楽曲の魅力をたっぷりと文:飯尾洋一アレクサンドル・ラザレフ(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団ロシアの巨匠の真実の声を聴く文:柴田克彦第880回 オーチャード定期演奏会5/15(日)15:00 Bunkamuraオーチャードホール第881回 サントリー定期シリーズ5/16(月)19:00 サントリーホール問 東京フィルチケットサービス  03-5353-9522 http://www.tpo.or.jp第680回 東京定期演奏会ラザレフが刻むロシアの魂SeasonⅢ ショスタコーヴィチ55/20(金)19:00、5/21(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 http://www.japanphil.or.jp 東京フィルとともにセンセーションを巻き起こすイタリアの俊英アンドレア・バッティストーニ。若くしてすでに 断言していい。ラザレフ&日本フィルのロシアものは、充実度において、いま日本オーケストラ界の中でも最上位に位置している。特に2年来のショスタコーヴィチ交響曲シリーズは圧巻だ。まずはプレ的な7番から、4番、11番、8番と続く大曲路線のシリーズ前半で、壮絶な熱演を展開。その真の凄さは、単なる爆演ではなく、緻密かつ引き締まった音作りの中で、有機的なエネルギーが創出されている点と、作曲者や曲への強いシンパシーを反映した雄弁でこまやかな表現が、他と一線を画した説得力を生み出している点にある。 さて今期は軽量路線(?)。昨秋の9番を経て、5月に6番が披露される。陰鬱に始まり、異常なほど浮かれた熱狂に至る、序破急的な構成の3楽章交響曲だ。鬱と躁の振り幅の広いこの曲で、ラザレフのダイナミックレンジの広さが効果を発揮するのはもちろんだが、さらに期待できるのは、この不思議その指揮ぶりには風格が漂う。この5月には、ヴェルディ、ロータ、レスピーギの作品を取り上げる興味深いプログラムを披露する。バッティストーニによれば「イタリアを代表するにふさわしい作曲家」たちが並んだ。 得意のヴェルディからは歌劇《ナブッコ》序曲。短い序曲のなかにも起伏に富んだドラマを生み出すバッティストーニの手腕がここでも発揮されることだろう。 ニーノ・ロータは多くの人にとって『ゴッドファーザー』や『ロミオとジュリエット』といった映画音楽の作曲家だろうが、一方で交響曲や協奏曲といった純音楽作品も書いている。今回演奏されるのは組曲「道」。もともとはフェリーな曲の真実の姿。なぜなら前回の9番で、シニカルなディヴェルティメント風の同曲が、実は情緒豊かな“ロシア音楽”であることが明示されたからだ。それゆえ6番もイメージ一新の可能性が高い。 ラザレフの公演は、カップリング曲も魅力。今回は、チャイコフスキーの組曲第1番だ。第4交響曲の直後に書かれたこの曲は、厳しいフーガあり、バレエ風の優雅な曲あり、愛らしい音楽あり…といった多彩な玉手箱。ラザレフいわく「シンフォニー以上にロシア的要素の濃い組曲こそが、チャイコフスキーの神髄である」。ニ監督の有名な映画のために書かれたものが、その後、バレエ音楽、さらに組曲へと仕立てられた作品である。バッティストーニは「20世紀イタリアの管弦楽曲のなかでもっとも興味深い曲のひとつ」と称賛している。 レスピーギからは交響的印象「教会のステンドグラス」。これも楽しみな選曲だ。グレゴリオ聖歌に触発されて書かれた、レスピーギの古楽探求への情熱と卓越した管弦楽法が一体となった色彩豊かな作品である。 イタリアの管弦楽曲が持つ魅力に改めて気づかされる公演となるだろう。生演奏など稀な曲だけに、このチャンスを逃してはならない。 本公演、ともかく必聴!アンドレア・バッティストーニ ©上野隆文アレクサンドル・ラザレフ ©山口 敦

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