eぶらあぼ 2016.5月号
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44ウィーン・フォルクスオーパー真にウィーン的な歌と芝居と踊りをとことん楽しむ文:田辺秀樹カールマン《チャルダーシュの女王》指揮:ルドルフ・ビーブル 演出:ロベルト・ヘルツル5/14(土)、5/15(日)、5/16(月) 各日15:00J.シュトラウスⅡ《こうもり》指揮:アルフレート・エシュヴェ、ゲーリット・プリースニッツ 演出:ハインツ・ツェドニク5/19(木)18:30、5/20(金)18:30、5/21(土)14:00、5/22(日)14:00 レハール《メリー・ウィドウ》指揮:アルフレート・エシュヴェ 演出:マルコ・アルトゥーロ・マレッリ5/26(木)18:30、5/27(金)18:30、5/28(土)14:00、5/29(日)14:00会場:東京文化会館問 NBSチケットセンター03-3791-8888 http://www.nbs.or.jp ウィーン・フォルクスオーパーの来日公演が近づいてきた。今回はJ.シュトラウスⅡの《こうもり》、レハールの《メリー・ウィドウ》、それにカールマンの《チャルダーシュの女王》の3本立て。ウィーン・オペレッタの神髄を心ゆくまで楽しむにはまたとない絶好の機会だ。キルヒシュラーガーのオルロフスキーに期待 まずは《こうもり》。あらゆるオペレッタのなかでも別格の傑作だ。すこぶるウェルメイドな台本にシュトラウスが付けた音楽は無類のすばらしさで、何度見ても心奪われ、ウィーン風喜歌劇の醍醐味を満喫できる。今回は現在、オーストリア最高の名メゾソプラノであるアンゲリカ・キルヒシュラーガーがオルロフスキー役を歌うのが、非常に楽しみ。フロッシュ役のロベルト・マイヤーも、味のある洒脱な演技でたっぷり楽しませてくれるにちがいない。演出はハインツ・ツェドニクということで、趣味の良いオーソドックスな舞台が期待できる。ベテランと新星たちが彩る華やかで甘美な舞台 《メリー・ウィドウ》は、ワケあって互いに意地を張り合い、すなおになれないむずかしいカップルが、紆余曲折をへて最後にはめでたく結ばれるという、お洒落なラブ・コメディ。レハールならではの甘美でエロティックな音楽が全編にあふれ、心をとろけさせる。それぞれの役に定評あるべテランと注目の新星たちが、舞台となるベル・エポックのパリの華やかな雰囲気を盛り上げてくれることだろう。演出はマルコ・アルトゥーロ・マレッリ。指揮はオペレッタに経験豊富な名手アルフレート・エシュヴェだから、《メリー・ウィドウ》の魅力を余すところなく引き出してくれること、うけあいだ。美貌のプリマドンナ、アンドレア・ロスト登場 今回の3演目のなかで最高の見ものは、《チャルダーシュの女王》かもしれない。ブダペストの歌姫シルヴァとウィーンの貴族の御曹司エドウィンという、身分違いのふたりの結婚をめぐる、愉快なスッタモンダの物語。ハンガリー出身のカールマンが作曲したこのオペレッタがもつ特別の魅力は、ご当地名物パプリカのスパイスをしっかり効かせた、コクのあるハンガリー風味だ。今回、ハンガリー出身の美貌の人気プリマドンナ、アンドレア・ロストが題名役を歌い演じるというのだから、これはもう期待せずにはいられない。血湧き肉躍るような熱いチャルダーシュの歌と踊りを披露してくれるだろう。相手役のエドウィンをはじめ、脇をかためる歌手たちも、それぞれ役柄にぴったりの適役ぞろいだ。演出は、ウィーン・オペレッタの演出にかけてはとびきり経験豊かで信頼のおける大御所ロベルト・ヘルツルによるもの。そして指揮も、誰もが最高のオペレッタ指揮者と認める、そして再三の来日公演で日本でもおなじみの、あのルドルフ・ビーブルだ。これほど贅沢な《チャルダーシュの女王》は、本場ウィーンやブダペストでもめったに見られないだろう。 10年くらい前の頃のウィーン・フォルクスオーパーは、オペレッタよりもオペラやミュージカルに力を入れているのではないかと思われるようなところがなくはなかった。しかし、近年は世界的なオペレッタ人気の復活とともに、このオペレッタの殿堂も、ふたたび王道を行こうとしているようで、うれしい限りだ。国立歌劇場の贅を尽くしたオペラのすばらしさはもちろんだが、真にウィーン的な歌と芝居と踊りをとことん楽しもうというのなら、やっぱり見るべきはフォルクスオーパーのオペレッタだ。ルドルフ・ビーブル アンドレア・ロスト ©Tamás Dobosアンゲリカ・キルヒシュラーガー ©Nikolaus Karlinskyロベルト・マイヤー ©Johannes Ifkovits
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