eぶらあぼ 2016.5月号
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425/28(土)16:00 八ヶ岳高原音楽堂(0267-98-2131)5/29(日)15:00 所沢ミューズ マーキーホール(04-2998-7777)6/2(木)19:00 札幌コンサートホールKitara(小)(011-520-1234)6/4(土)19:00 フィリアホール(045-982-9999)中村恵理(ソプラノ)世界で活躍するディーヴァの新境地取材・文:岸 純信(オペラ研究家)Interview 「私は燃焼型です!」と話す中村恵理。いま、世界の歌劇場から最も注目される邦人歌手として、豊かな声量を駆使し大舞台で成功を収める新星ソプラノである。その素顔は少女のようにあどけないが、中身は冷静な判断力を有する大人の女性。「度胸と自制心」の塊として、国内コンサート・ツアーへの抱負を熱く語ってくれた。 「5月末から6月初めに、八ヶ岳、所沢、札幌、横浜でリサイタルを開きます。どのホールも初めて伺うので『お客さまはどの曲がお好みかな? どんな風に響くかしら?』と楽しみです。4会場の連携で素晴らしい機会を与えていただき、本当に感謝しています」 プログラムも中村らしく考え抜かれたものに。「親しみやすさと新境地」が絶妙なバランスで共存する。 「前半はドイツ歌曲を。初夏にぴったりかなと思ってシューベルトの〈ます〉やR.シュトラウスの〈献呈〉を選び、大好きなクララ・シューマンの〈美しさゆえに愛するのなら〉も入れてみました。メロディがしっとりしてそれは美しいです。後半は中田喜直の〈霧とはなした〉やオペラ・アリアを歌います。〈私の大好きなお父さん〉は、いかにもプッチーニらしい名アリア。僅か2分間に見せ場がギュッと詰めこまれています。マスネの〈小さなテーブルよ〉は、美少女マノンが矛盾する心境を歌う一曲ですが、その矛盾が逆に人間らしくて共感します…。この《マノン》やグノーの《ファウスト》のマルグリートは舞台で一度やってみたい役なんです!」 英国ロイヤル・オペラにおいて、アンナ・ネトレプコの代役で《カプレーティとモンテッキ》のジュリエッタを歌い、一躍時の人となった中村。現在はバイエルン国立歌劇場の専属歌手として活動しながら、欧米各地にゲスト歌手で招かれ、ロンドンでの《ウェルテル》のソフィーはライヴ音源が発売。《リゴレット》のジルダは英国のオペラ雑誌にも絶賛されている。 「《カプレーティ》や《カルメン》でエリナ・ガランチャさんと共演し、発声法のことで励ましの助言をいただけて嬉しかったです!《ウェルテル》では指揮のパッパーノさんのご指導が厳しく、コテンパンにやられたことも良い経験になりました(笑)。声って本当に不思議で、準備よく育つものでもなく、役のオファーが来て数年後にいざ本番となると、響きが想像以上に重くなっていることもあります。《リゴレット》もブーイング覚悟で出演しましたが、高い評価をもらうことができてほっとしました。今回の連続リサイタルでは『今の中村恵理』をどうぞお楽しみ下さい。毎回、燃え尽きます!」5/27(金)19:00 Hakuju Hall問 Hakuju Hallチケットセンター03-5478-8700 https://www.hakujuhall.jp大萩康司プロデュース ギターと声 vol.2 ~プラテーロとわたし~日本語訳で際立つ詩と音楽の美しさ文:宮本 明波多野睦美 ©Toshiyuki Kohno大萩康司 ©松村秀雄 パリで学んだ“現代最強のギター・キッズ”のひとり、大萩康司。昨年メゾソプラノの林美智子との日本歌曲プログラムで始まったHakuju Hallでの『ギターと声』(全3回)の2回目は、波多野睦美を招いてのカステルヌオーヴォ=テデスコ作曲の「プラテーロとわたし」(全曲)。月のような銀色の毛を持つロバ「プラテーロ」の美しく悲しい物語は、ノーベル文学賞を受賞したフアン・ラモン・ヒメネスの同名詩集から編まれたギターと朗読とうたのための全28曲の作品だ。波多野自身による日本語訳による演奏。言葉を伴う音楽が常にそうであるように、日本語にすることで、原詩のスペイン語の響きが醸し出す「何か」が失われる危険が隣り合わせであるのは言うまでもないけれど、言葉に、そしてもちろん音楽に、研ぎ澄まされた繊細な感覚で耳をすませる波多野ならば安心。この曲が、日本語訳の朗読付きで全曲演奏される機会に巡りあうことは一生の間にそんなに多くないはず。貴重だ。
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