eぶらあぼ 2016.5月号
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第19回 若者の、若者による、若者のためのフェスティバル これまでも「若いダンサー達が中心になって小規模ながら熱のあるフェスティバルを世界中で立ち上げている」と書いてきた。ダンサー同士のつながりは独特で、プロデューサーでも追いきれない意外な取り合わせが魅力だ。「中堅のダンサー達が客を集め、若いアーティストが暴れ回る場所を作ってやる」というフェスが、従来の枠に収まらないような才能を持つ若手を引っ張り上げる機会を生む。 日本でも以前からKENTARO!!が、こまばアゴラ劇場などでアーティストを集めた「at plat fesdesu(フラット・プラット・フェスデス)」をやっていた。ダンスだけじゃなくミュージシャンや演劇も含み、日替わりで一週間くらい、料金も抑えめ。今年横浜ダンスコレクションで審査員賞を受賞したAokidも、オレが初めて見たのは数年前のこのフェスでのことだった。中学生がはしゃいでいるような嬌声と手作りの舞台装置の数々、しかし踊り出すとストリート系のダンスがキレキレで、驚かされたよ。 そして今年3月にはBaobab主宰の北尾亘が『DANCE×Scrum!!!(ダンス・スクラム)』というフェスを立ち上げた。あくまでもBaobabが主催で、会場のあうるすぽっとが共催、というあたり、覚悟を見せたな。Baobab、中村蓉、プロジェクト大山という人気の中堅が劇場内で上演する。で、その前後に公募で選ばれた若いカンパニーがロビーでいろいろやって見せたのだ。あうるすぽっとのロビーはかなり広くて、しかも絨毯敷き。床に座っても苦にならない。若手も客を移動させたり、階段に投影してプロジェクション・マッピング的なことをやってみたりと、場所の特異性を使い切ってやろうと色々工夫を凝らしていた。終わった後はロビーにDJが登場しPrifileのりこしたかお/作家・ヤサぐれ舞踊評論家。『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイドHYPER』『ダンス・バイブル』など日本で最も多くコンテンポラリー・ダンスの本を出版している。うまい酒と良いダンスのため世界を巡る。乗越たかおバーもできて観客も飲みながら踊れる。しかもメインの3カンパニーがまたそれぞれ新境地に挑戦していて、そこについても語り尽くしたいのだが、またの機会に。 3月にはDEVIATE.CO(小池陽子・石井則仁)が開催した「GOLD EXPERIENCE Project」もあった。タイトルは「黄金の体験」という意味。海外の有名ダンサーを招き、日本と韓国の各地でワークショップを開き、最後に公演を行うもの。ワークショップはダンスの出前にもなり収益もあげられるというスマートなアイディアだ。主催の小池はバレエ、石井は現役の山海塾舞踊手で、ともに韓国等のコンペティションで受賞を重ねる実力者である。 あと宝栄美希が企画している石川ダンスフェスティバルなど、各地で色々動きがあるようだ。どんどんやったらいい。2年に一度の一日開催でも全然構わん。で、オレをトークで呼べば、バッチリとレクチャーもしてやるぜ! さていくつか告知が。オレの名著!『ダンス・バイブル』が、「ダンスとオリエンタリズム」というホットでディープな話題を増補して出版されたぞ!あとこの号が出る頃は、フランスとチェコへ取材に行っている。成果を待て。さらに横浜の「バンカートスクール」という企画で5月と6月の2ヵ月8回にわたって集中講座をやるので、ググってみてくれ!256

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