eぶらあぼ 2016.5月号
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253H・アール・カオス 新作公演白河直子ソロダンス『エタニティ』密な空間で“永遠”に触れる文:新藤弘子高谷史郎(ダムタイプ) 『CHROMA(クロマ)』色彩を巡る旅への誘い文:高橋森彦7/1(金)~7/3(日) 愛知県芸術劇場(小)問 愛知県芸術劇場052-971-5609 http://www.aac.pref.aichi.jp5/21(土)、5/22(日)各日14:00 新国立劇場(中)問 新国立劇場ボックスオフィス03-5352-9999 http://www.nntt.jac.go.jp/dance H・アール・カオスは、演出・振付家の大島早紀子とダンサーの白河直子によって1989年に始動。『春の祭典』『ボレロ』『カルミナ・ブラーナ』などの話題作を次々に繰り出し、壮大なビジョンを可視化する大島の天才的手腕と、ほとんど一身でそれを体現する白河直子の迫真のダンスで、舞踊界に衝撃を与えた。コアなダンス愛好家ばかりではなく、バレエやダンスとはなじみの薄い若者たちや、知識人と呼ばれる人々も、こぞって会場に足を運んだのだ。オーケストラや合唱隊との大がかりな共演が知られるが、活動はダンス公演に留まらず、ミュージカルやオペラの演出・振付でも高い評価を受けている。 そのH・アール・カオスが6年ぶりに発表する新作が、白河直子ソロダンス『エタニティ』。永遠、無限の過去、来世、不滅など、多くの意味を含むタイトルは深遠だが、難解なだけの作品に終わ 1984年結成のアーティスト・グループ「ダムタイプ」の創設メンバーで、パフォーマンスやインスタレーションにおいて視覚面を担ってきた高谷史郎。個人としても、国内外で坂本龍一をはじめとするアーティストとコラボレーションを重ね、最近はパフォーマンス作品の制作に精力的だ。2012年初演の『CHROMA(クロマ)』は、13年にフランスの「マルセイユ・フェスティバル」で上演され、ヨーロッパにも上陸した話題作。 表題は「色相と彩度を合わせた色の性質」のこと。個性的な映像美学で知られる英国の映画監督デレク・ジャーマンが遺した、色彩に関する文章から想を得たという。音楽をジャーマンの映画音楽を担当したサイモン・フィッシャー・ターナーらが手掛け、薮内美佐子、平井優子ら気鋭のパフォーマー、それにミュージシャン、プログラマー、映像クリエイターを高谷が総合ディレクションとして統括し「色彩を巡る旅」へと誘う。らないことは、これまでの実績が物語っている。ダンスにすべてを注ぎ込み、その場で燃え尽きるかのような白河の動き、独特の存在感は、いちど観たら忘れられない。これまでにも代表作を上演してきた愛知県芸術劇場での上演、しかも今回は小ホールという密な空間で、間近に作品の息吹に触れられる。6年の時がもたらした深化はどのようなものか。深い思索と研ぎ澄まされた肉体は永遠とどう切り結ぶのか。まだカオスの世界に触れたことのない人も、ぜひ足を運んでほしい。 「アートとサイエンスは同じものの表と裏のようなものだ」と語る高谷は、パフォーマーによる身体表現と緻密な視覚・音響効果を結び付け、観る者を驚くべき世界へと誘う。圧倒的な吸引力と臨場感を伴う「高谷ワールド」を体感するのは、この上なくスリリングだ。 なお21日公演終了後に本公演の入場券購入者を対象に、高谷と浅田彰(京都造形芸術大学教授)によるアフタートークが行われる(入場無料。ただし満席の場合制限あり)。白河直子 撮影:野波 浩Photo by Kazuo Fukunaga

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