eぶらあぼ 2016.5月号
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166SACDCDCDCDパガニーニ:24のカプリス/高木和弘パリのアメリカ人~オーボエ・ジャズ室内楽~/茂木大輔ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ集 Vol.2/清水和音お百度詣~日本人女性作曲家の系譜/ファイン・デュオパガニーニ:24のカプリスop.1高木和弘(ヴァイオリン)ガーシュウィン:パリのアメリカ人~ブルース・テーマ、ヘ調のコンチェルト/エリントン:サテン・ドール/ストレイホーン:A列車で行こう/筒井康隆:活動寫真、ジャズ大名/モンク:ブルー・モンク 他茂木大輔(オーボエ)、荒井英治(ヴァイオリン)、加藤明久(クラリネット)、吉田 将(ファゴット) 他ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第21番「ワルトシュタイン」・第17番「テンペスト」・第26番「告別」清水和音(ピアノ)幸田 延:ヴァイオリン・ソナタ第1番・第2番/松島 彜:一茶/吉田隆子:カノーネ、ヴァイオリン・ソナタ、お百度詣/増本伎共子:ソロ・ヴァイオリンのための4つの小曲/金井喜久子:「てぃんさぐの花」変奏曲 他ファイン・デュオ【沼田園子(ヴァイオリン)蓼沼明美(ピアノ)】 他ナミ・レコードWWCC-7805 ¥2500+税マイスター・ミュージックMM-3073-74(2枚組) ¥3900+税オクタヴィア・レコードOVCT-00128 ¥3200+税カメラータ・トウキョウCMCD-28333 ¥2800+税「パガニーニのカプリス24曲全部に一気にとりかかるのは、すべてのヴァイオリニストにとって、大変な挑戦」。そう前置いての高木の録音は、左手によるフィンガリングの的確さは言わずもがな、右手によるボウイング表現の彩りの豊かさが耳を奪う。それも、変奏が進むごと、絵本のページをめくってゆくかのような、コントラストの鮮やかさ。一方で、「体力が続く限り、頭から一気に弾き、修正を加えてゆく」という独特の取り組みから、この作品の“継続的感覚”も尊重。その結果、全曲が、「8曲ずつの3幕からなる」一連の物語として成立する、流れの良さを実現した。名演だ。(笹田和人)マルチな活動で知られるN響首席オーボエ奏者・茂木大輔が、1998年と99年に録音したジャズ・アルバム2種の、合体リニューアル版。1枚目「オーボエ・ジャズ室内楽」では、主にオールド系の作品を弦楽器と、2枚目「木管三重奏」では、モンクや山下洋輔などモダン系の作品をクラリネット&ファゴットとコラボしている。全体にお洒落でセンス抜群。アレンジも巧みなガーシュウィンをはじめ、チャーミングで愉しい1枚目と、シャープでシリアスな2枚目との感触の違いも妙味十分だ。オーボエの表現力の豊かさに感嘆させられる、いま聴いても新鮮なディスク。(柴田克彦)20年前のソナタ全曲録音に続き、清水和音が再びベートーヴェンに挑むソナタ集の第2弾。骨太で透明感ある音で奏でられる「ワルトシュタイン」は、硬派であると同時に強い輝きと生命力を持っていてとにかく格好いい。「テンペスト」では、情熱をぶつけるような音楽が、ときに荒々しく、ときに柔らかく立体感をもって構築される。「告別」は思い切りのよいドラマティックな音楽づくりで、一つの物語を聴くよう。音のダイナミックレンジが広く、現代ピアノの表現力をすみずみまで生かした演奏。清水の音楽哲学が投影され、聴くほどに味わいがしみ出す。(高坂はる香)沼田園子と蓼沼明美による「日本の響」シリーズ第4弾は、日本におけるクラシック音楽受容の黎明期〜現代にかけての女性作曲家5人による作品を収録というコンセプト。幸田延によるヴァイオリン・ソナタ2曲での伸びやかな抒情、松島彜(つね)が小林一茶の俳句に触発された文字通りの「一茶」でのありきたりでないシンプルさ、教科書的なカノンの中で、それを逆手に取って見事なセンスを見せる吉田隆子の「カノーネ」(21歳時の作品)、バルトークの無伴奏ソナタに範を取ったという増本伎共子の「ソロ・ヴァイオリンのための4つの小曲」など、いずれも秀作・力作だ。(藤原 聡)
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