eぶらあぼ 2016.4月号
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68ジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団ブラームスと新ウィーン楽派の深淵なる世界文:山田治生アンサンブル・アフタヌーン Vol.2 音楽で夢みる午後室内楽の名曲を楽しむ贅沢な午後のひととき文:オヤマダアツシ第55回 川崎定期演奏会4/23(土)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール第639回 定期演奏会4/24(日)14:00 サントリーホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jp5/20(金)13:30 東京オペラシティ コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp 現在、東京のオーケストラ界において、最も興味深いプログラムで、最も音楽的な成果をあげているコンビは、ジョナサン・ノット&東京交響楽団に違いない。昨年の、リゲティで始まり、バッハ、R.シュトラウスを経て、ショスタコーヴィチで締め括られるプログラムはセンセーショナルな成功を収めた。また、アンサンブル・アンテルコンタンポランやバンベルク交響楽団のシェフを歴任し、ヨーロッパで最も注目される指揮者の一人に数えられるノットが東京交響楽団の音楽監督の任期を2026年(!)まで延長すると発表したのも驚きだった。 4月の定期演奏会の選曲も非常に凝っている。シェーンベルクの「ワルシャワの生き残り」、ベルクの《ルル》組曲、ブラームスの「ドイツ・レクイエム」。新ウィーン楽派の2人の作曲家の作品のあと、ウィーンで活躍したブラームスの作品に戻るというプログラム。シェーンベルクは、ブラームスの 大編成のオーケストラや一人だけのピアノ・リサイタルなどと異なり、室内楽の魅力は演奏者数名のバランス感覚や関係性、それぞれの個性や仕掛け合いなどが明確に感じ取れることだろう。しかもそれは室内楽の演奏に長けた練達の士であればこそ可能性が広がり、演奏の充実度アップが期待できるのは言うまでもない。 若手ヴァイオリニストの注目株である成田達輝、どのような編成であってもアンサンブルを融合させてしまうヴィオリストの川本嘉子、すでにベテランの風格を漂わせているチェリストの趙静、そして揺るぎない要として存在感を示すピアニストの練木繁夫。この4人によるコンサート『音楽で夢みる午後(アフタヌーン)』は、平日(金曜日)の午後でありながら、演奏・選曲共にかなり本格的な室内楽が堪能できるはずだ。ピアノ四重奏曲第1番を管弦楽用に編曲するなど、先輩作曲家を尊敬し、影響も受けた。「ワルシャワの生き残り」は「語り手、男声合唱、管弦楽のための」と記され、語り手はクレシミル・ストラジャナッツが務める。《ルル》組曲では コンサートのメインとなるのは、ブラームスが20代後半に完成させたピアノ四重奏曲第1番。青年の作品とはいえ3曲のピアノ・ソナタやピアノ協奏曲第1番、弦楽六重奏曲第1番などがすでに発表された後であり、後年の風格を予感させる部分がたくさんあるという名曲なチェン・レイスがルルを歌う。凄絶な運命をたどった一人の男と一人の女の物語。それぞれのソリストが後半の「ドイツ・レクイエム」で歌うのも意味深長である。既に国際的に注目されている新進気鋭の2人の歌唱も楽しみだ。のだ。コンサートの前半にはソロやデュオで聴かせるバッハ、ショパン、モーツァルトの作品が並び、リラックスして聴けるようなプログラムとなっている。 夜のコンサートには行けないけれど昼間なら! という方は、この本格派コンサートをお聴き逃しありませんよう。クレシミル・ストラジャナッツチェン・レイス ©Paul Marc Mitchellジョナサン・ノット ©K.Miura練木繁夫 ©大窪道治趙 静 ©ビクター・エンタテインメント川本嘉子成田達輝 ©Hiroki Sugiura

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