eぶらあぼ 2016.4月号
67/221

64川瀬賢太郎(指揮) 神奈川フィルハーモニー管弦楽団情熱とリズムが弾ける華麗なオープニング文:柴田克彦高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団異なる世界観の2大シンフォニストが呼応する文:江藤光紀第318回 定期演奏会 みなとみらいシリーズ4/9(土)14:00 横浜みなとみらいホール問 神奈川フィル・チケットサービス045-226-5107 http://www.kanaphil.or.jp第297回 定期演奏会5/14(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 http://www.cityphil.jp 川瀬賢太郎への注目度が増している。1984年生まれの彼は、2014年(指名時は20代!)に神奈川フィルの常任指揮者に就任し、現在は名古屋フィルの指揮者も兼務している。15年には「渡邉暁雄音楽基金」の音楽賞を受賞。この3月には、実力派指揮者が選出されてきた「齋藤秀雄メモリアル基金賞」を受賞。先日行われた同賞の授賞式で永久選考委員の小澤征爾から直に贈賞された。彼の凄さは、若さに似合わぬ堅牢な構成力と内なるパッションの共生であろうが、伸びしろの大きさも感じさせるだけに目が離せない。 そこで注目すべきは、シェフとなって3シーズン目を迎える神奈川フィルの定期公演。開幕の4月に登場し、ベルリオーズの「幻想交響曲」を軸としたプログラムを披露する。あの斬新なオーケストレーションと情熱や狂気をどう表現し、数多の名演がなされてきたこの曲で、聴く者にいかなる感銘を与える 現在、東京シティ・フィル常任指揮者を務める高関健が、5月定期にロマン派の最後を飾る2人のシンフォニスト、マーラー(大地の歌)、シベリウス(交響曲第7番)の後期交響作品を組み合わせたプログラムを聴かせてくれる。これらの作品の独自な姿は、彼らが多くの作曲経験を重ねた末にたどりついた究極の形である。 まず、シベリウス。1865年に生まれ、フィンランドの独立運動の盛り上がりと軌を一にして自国民話などに基づく交響詩を数多く作り、国民的作曲家となった。しかし60歳のときに発表した「タピオラ」を最後に沈黙する。単一楽章からなる交響曲第7番は、この擱筆の前年に発表されている。交響曲としての音楽的実質をそのままに、各楽章の要素が混然一体となり、20分ほどの持続の中で、爽やかだが密度の濃い想念の流れが紡がれていく。 シベリウスより5歳年上のマーラーか? チラシなどにある彼のメモには「ここぞというポイントで指揮する勝負曲」と記されているので、大いに期待したい。また、プーランクの「2台のピアノのための協奏曲」では、ロン・ティボー国際コンクールで優勝した田村響と、シューベルト国際コンクールで優勝した佐藤卓史がソロを弾く。こうした軽はボヘミアで生まれ、ウィーンの爛熟した世紀末文化を生きた。交響曲とも歌曲ともいえる「大地の歌」は中国の翻訳詩集に基づき、当時流行した東洋趣味やユーゲントシュティル美術のような装飾性を聴きとることができる。歌詞を生かすために繊細なオーケストレーションが施されており、その空間性が生み出す諸行無常の味わい妙な2台協奏曲を、男性実力派コンビで聴く機会は稀ゆえに、こちらも要注目だ。ちなみに先の川瀬メモいわく、同曲は「モーツァルトが隠れてるオシャレな協奏曲」で、1曲目のコダーイ「ガランタ舞曲」は「かっこいいダンスチューン」。これは、あらゆる意味で楽しくエキサイティングな公演になりそうだ。は格別だ。 徹底的なスコアの読みに定評がある高関と東京シティ・フィルが、誠実に向かい合う。メゾソプラノには独シュトゥットガルト在住のベテラン小山由美が、テノールには先日、二期会の《トロヴァトーレ》で難役マンリーコを歌った小原啓楼が登場する。佳演に巡り合えるはずだ。佐藤卓史田村 響 ©武藤 章川瀬賢太郎 ©Yoshinori Kurosawa小原啓楼小山由美高関 健 ©Masahide Sato

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 67

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です