eぶらあぼ 2016.4月号
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60ピエタリ・インキネン(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団新世代のマエストロが引き出す劇的な鎮魂の響き文:飯尾洋一第316回 横浜定期演奏会 4/16(土)18:00 横浜みなとみらいホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 http://www.japanphil.or.jp 今年創立60周年を迎える日本フィルは、この9月に現首席客演指揮者であるピエタリ・インキネンを新たに首席指揮者に迎える。すでにたびたびの共演によって成果を残してきたインキネンと日本フィルのコンビが、一段と密接な関係を築いて、さらなる躍進への第一歩を踏み出すことになる。 そのインキネンと日本フィルが、4月の横浜定期演奏会でとりあげるのは、ヴェルディの「レクイエム」。これまでにインキネンが取り組んできたワーグナーやマーラー、シベリウスといったレパートリーを考えると、ヴェルディはやや意外な選択ともいえるだろうか。 ヴェルディの「レクイエム」といえば、死者のためのミサ曲でありながら、あたかもイタリア・オペラ的なドラマティックな興奮を呼び起こす曲として、かねてより多くのオペラ指揮者たちがすぐれた演奏を残してきた。パレルモの《ニーベルングの指環》で成功を収めるなど、ワーグナー指揮者でもあるインキネンは、この大作にどのようなヴィジョンを与えてくれるのだろうか。 声楽陣には大隅智佳子(ソプラノ)、池田香織(メゾソプラノ)、錦織健(テノール)、妻屋秀和(バス)、といった実力者たちがそろう。晋友会合唱団とともに万全の布陣。スペクタクルから真摯な祈りの感情まで、多様な要素が一曲にぎっしりとつまった傑作に、また新たな名演がひとつ誕生することを期待したい。妻屋秀和錦織 健 ©大八木宏武(都恋堂)池田香織大隅智佳子ピエタリ・インキネンフランソワ=グザヴィエ・ロト(指揮) 東京都交響楽団4管編成“バレエ全曲版”で顕になるストラヴィンスキーの創意文:オヤマダアツシ第805回 定期演奏会 Aシリーズ 4/12(火)19:00 東京文化会館問 都響ガイド03-3822-0727 http://www.tmso.or.jp 間違いなく、いま聴くべき指揮者の一人だろう。ルネサンスから現代までの幅広いレパートリーに新しい光を当て、昨日作曲されたような新鮮さで聴かせてくれるフランソワ=グザヴィエ・ロトは、常に何かを期待させる指揮者でもある。自身が結成したアンサンブル「レ・シエクル(世紀)」を率いてラ・フォル・ジュルネに登場し、ここ数年はN響の「第九」公演や読響の定期演奏会も指揮。CDでもフランス近代の作品やストラヴィンスキーなどを作曲当時に立ち返って演奏するなど、冒険的な印象がますます強くなっている。 そのロトが、今度は都響の指揮台に初登場。4月の定期演奏会Aシリーズでは、およそ100年前にパリを湧かせたストラヴィンスキーのバレエ音楽「火の鳥」と「ペトルーシュカ」を取り上げる。組曲版(短縮版)などで演奏されることも多い中、今回は共に4管編成のバレエ全曲版スコアを使用。楽器の使い方や音色のブレンドなど、当時としては斬新なアイディアが満載の2曲だが、作曲者がまさにその曲を生み出そうとしている時代について熟考し、楽器法などにおけるさまざまなアイディアを再検証するというロトだからこそ、全曲版スコアで演奏する意味があると言えるだろう。それゆえ聴き慣れているという人でも、あちらこちらで新しい発見があるはず。都響の洗練された音と色彩感が際立ち、鮮烈な演奏となるに違いない。フランソワ=グザヴィエ・ロト ©Marco Borggreve

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