eぶらあぼ 2016.4月号
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186CDCDSACDCD展覧会の絵/昭和サクソフォーン・オーケストラチャイコフスキー:交響曲全集/スヴェトラーノフ&ロシア国立交響楽団ザ・デビュー/實じつかわ川 風かおるバッハ・アルバム/ブッフビンダーショスタコーヴィチ(佐々木匠編):祝典序曲/ドビュッシー(松平和也編):小組曲/グラズノフ(福本信太郎編):サクソフォーン協奏曲/ムソルグスキー(福本信太郎編):展覧会の絵昭和音楽大学 昭和サクソフォーン・オーケストラ大森義基、野原武伸、福本信太郎(以上指揮)チャイコフスキー:交響曲第1番~第6番「悲愴」エフゲニ・スヴェトラーノフ(指揮)ロシア国立交響楽団シューマン:アラベスク(スタインウェイ、ベーゼンドルファー)/チャイコフスキー:ドゥムカ~ロシアの農村風景/ショパン:スケルツォ第3番/ヌーブルジェ:メリーゴーランドの光~ピアノのためのタンゴ/ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第21番「ワルトシュタイン」實川 風(ピアノ)J.S.バッハ:パルティータ第1番・第2番、イギリス組曲第3番ルドルフ・ブッフビンダー(ピアノ)マイスター・ミュージックMM-3070 ¥3000+税オクタヴィア・レコードOVCL-00588(6枚組) ¥5000+税ソニー・ミュージックダイレクトMECO-1033 ¥3000+税ソニーミュージックSICC-30256 ¥2600+税総勢約80名のサクソフォーン奏者で構成されるオーケストラのアルバム第2弾。同族楽器による演奏にもかかわらず、響きが驚くほど豊麗で多彩。まるで超一流のパイプオルガン演奏を聴いているようだ。前半のショスタコーヴィチとドビュッシーは、前者を力強く華やかに、後者を緻密かつ親密に、と巧みに吹き分ける。続くグラズノフの協奏曲では、ソロを吹く有村純親の優美でシャープな名人芸が光る。そして、トリを飾るムソルグスキー「展覧会の絵」。こちらは編曲の妙もあり、オーソドックスな流れの中に、ドラマティックな起伏を瑞々しく描いている。(渡辺謙太郎)ロシアの名指揮者スヴェトラーノフといえば、わが国での名演・爆演が今でも語り草になっている。筆者も1993年N響初登場時のチャイコフスキー4番の熱狂を体験でき、その衝撃は忘れられない。当全集はその同年モスクワでのセッション録音で、短期間で一気に収録された。90年の東京ライヴ録音全集とは違って落ち着いたテンションで臨み、精度良好とは言えない場面もあるが、ハマったときの壮絶さはやはり特別。全体に演奏は遅めで、悠揚迫らぬ重量感。5番結尾など大軍の行進さながら。一方、6番1楽章展開部などの攻撃的な迫力も十分。緻密な設計で幅広い表現を勝ち得た全集だ。(林 昌英)昨年のロン=ティボー=クレスパン国際コンクール3位に輝いた實川風のデビューアルバム。シューマンの「アラベスク」をスタインウェイ「D-274」とベーゼンドルファー「モデル250(1909年製)」の2種類のピアノで収録しているが、前者は輝かしくスマートな表現で、後者は温かな音色と間(ま)を活かした表現で聴かせる。深い呼吸感と勢いとを併せ持つショパンの「スケルツォ第3番」や、内省的な色味を帯びたベートーヴェンの「ワルトシュタイン」はじっくりと聴き込みたい。感性・知性・技術・楽器に呼応するコントロール力、それらすべてが高次元にある録音だ。(飯田有抄)最近はフォルテピアノなど、歴史的鍵盤楽器への取り組みを披露している名匠ブッフビンダー。それぞれの楽器の特長を的確に捉えて、一番“鳴らせる”ツボをきっちり押さえてくるのがさすが。だから、モダンピアノを使ったバッハ演奏でも、チェンバロの真似事などは決してせず、ふさわしい表現を目指す。結果的に得られる、ピアノの音が“伸びて来る”、あるいは“飛んでくる”独特の感覚は名匠ならでは。しかも、意識的に拍節感を薄目にしたかと思えば、次にはバス旋律を浮き彫りにするなど、楽想ごとに繊細かつ変幻自在に表現を変化させ、良い意味で聴き手を“翻弄”する。(寺西 肇)

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