eぶらあぼ 2016.3月号
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59ルドルフ・ブッフビンダー(ピアノ)独墺ピアノ音楽の傾聴すべき王道文:柴田克彦秋元万由子(フルート) & 西村 優ゆたか(ピアノ)新生代の名手たちが醸し出すヨーロッパの香り文:笹田和人3/4(金)19:00 すみだトリフォニーホール問 トリフォニーホールチケットセンター03-5608-1212 https://www.triphony.com3/26(土)14:00 ヒストリア宇部 イベントホール3/28(月)19:00 ドルチェ・アートホール Nagoya3/31(木)19:00 MUSICASA(代々木上原)問 ムジカキアラ03-6431-8186 http://www.musicachiara.com いま正統的なドイツ・オーストリア音楽を聴かせるピアニストは誰か? と考える。すると、まずブッフビンダーの名が浮かぶ。他には? と考えてみても、なかなか彼を凌ぐ者を探すのは難しいだろう。今年70歳を迎えるブッフビンダーは、独墺ピアノ界の押しも押されもせぬ巨匠なのだ。3月、すみだトリフォニーホールが単独で彼のリサイタルを開催する。プログラムはまさに王道の、バッハ、ベートーヴェン、シューベルト。むろん要注目だ。 5歳でウィーン音楽院への入学を許された彼は、師を辿ればベートーヴェンに行き着く超正統派。特にウィーン・フィルを弾き振りしたベートーヴェンの協奏曲全曲演奏(2013年の来日公演でも披露し、録音もある)が、音楽の都での信頼度の高さを物語る。またベートーヴェンのソナタの楽譜は、数多くのエディションを所有。自筆譜ともども綿密に研究し、50回にも及ぶ全曲演奏を行っ “フルートの世界三大コンクール”のひとつ、ミュンヘン国際音楽コンクールで昨年、特別賞「アリス・ロスナー賞」を受賞した秋元万由子。そして、その折に伴奏を務め、受賞に大きく貢献したピアノの西村優。そんな2人が再び顔を揃え、珠玉の名曲を披露する受賞記念のリサイタルを開く。音楽界の未来を担うミューズたちが紡ぐ調べは、聴く者の心に、きっと素敵な“何か”をもたらすはず。 秋元は高校時代に米留学を経て渡独し、ユンゲ・ドイチュ・フィルハーモニー管のメンバーとして活躍の一方、現在はスイスのルツェルン音楽大学で研鑽を積む。対する西村は高校卒業直後に渡伊し、その後ドイツのミュンヘン国立音楽・演劇大に学んで、現在は同地を拠点に演奏活動を続ける。共に10代で海外へと渡り、現地の習慣を含めた文化を吸収。何より、クラシック音楽が生まれた地の言葉を話し、実際に生活することで、「間の取り方やアクセントている。彼のピアノは、自然でいながら内省的かつドラマティック。音楽の本質を衒いなく聴かせる稀有の存在と言っていい。 トリフォニーホールでは、2012年のプロジェクトにおけるベートーヴェン&シューマンのリサイタルとブラームスの協奏曲2曲で真価を披露しているが、それを引き継ぐ本演目も実に興味深い。ベートーヴェンの「ワルトシュタイン」ソナタは前記通りの真骨頂。バッハの「イギリス組曲第3番」は最近新録音をリリースし、シューベルトのソナタ第の付け方、フレージングなど、根本的な“音楽の創り方”が変わった」と言う。 今回のステージは、シューベルト「『しぼめる花』の主題による序奏と変奏曲」と、20世紀フランスのジョリヴェ「リノスの歌」が軸に。「どちらも“うた”にインスピレーションを得て、作られた曲。21番は12年録音のCDで名演を聴かせた、共に旬の楽曲だ。中でも“強靭な感傷”ともいうべき深みを引き出したシューベルトは必聴! ここは貴重な王道にぜひ触れたい。歌詞がない分、曲の情景や心情に縛られないので、聴く方には自由に想像を膨らませていただければ」と秋元。ここへ、いわゆる『アウエルンハンマー・ソナタ集』中の1曲である、モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ第34番のフルート編曲版などが添えられる。西村 優秋元万由子

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