eぶらあぼ 2016.3月号
61/217

58第6回 野島 稔・よこすかピアノコンクール第1次予選:4/23(土)~4/25(月) 第2次予選:4/26(火)・4/27(水)本選・表彰式:4/29(金・祝) よこすか芸術劇場問 横須賀芸術文化財団(よこすかピアノコンクール事務局)046-828-1603 http://yokosuka-arts.or.jp野島 稔(ピアノ)横須賀から巣立つ新たな才能に注目したい取材・文:飯田有抄Interview 横須賀市に生まれ、ピアニストとして国際舞台で活躍し、現在は東京音楽大学学長を務める野島稔。その名を冠したコンクール『野島 稔・よこすかピアノコンクール』が今年で10年目、第6回を迎える。会場は国内最大級のオペラハウス仕様を誇る、よこすか芸術劇場。若きピアニストたちが真摯に音楽と向き合うステージは、第1次予選から本選まで全日無料で一般公開される。これはピアノファンなら必見だ。 「若い人たちが真剣に取り組んでいるフレッシュな姿は、何にも代え難い輝きをもっていますね。昨今の若い人は驚くほど優秀で、高度な作品も皆よく弾きこなします。その意味では甲乙つけ難いのですが、このコンクールでは技術面ばかりでなく、音楽的な豊かさをどう表現しているか、将来的な伸びしろがあるかどうかを審査基準としています。華やかなヴィルトゥオーゾであることだけが、ピアニストのあり方ではありません。たとえ地味でも、その人固有のものを示せるような、勇気のある音楽家に育ってほしい。このコンクールをひとつの経験にして、日本の音楽界の層を厚くするようなピアニストに成長してほしいですね」と審査委員長の野島は語る。 毎回80人ほどが“参戦”する1次予選では、ショパンと、リストからプロコフィエフまで、さまざまなエチュードを組み合わせて8~10分演奏する。2次はベートーヴェンのソナタの15曲中から1曲選び、全楽章を弾く。8名に絞られる本選では、自由なプログラムで40分の演奏が課せられる。 「ベートーヴェンのソナタにはシンフォニックな面や室内楽的な要素など、ピアノによる表現の枠を超えた要求があります。ベートーヴェン自身『緩徐楽章こそが勝負どころ』と捕らえていたようですし、全楽章を通じてしっかりと勉強してもらいたい。1次と本選は、どの作品を選び、どう組み合わせるかに表現力が問われます。音楽作品のあるべき姿を壊すような抜粋をしたり、弾ける曲だけ弾いたりするのではなく、最終的には客席の聴衆の心に届くような選曲をしてもらいたいですね」 審査員には、野平一郎と若林顕のほか今年から東誠三と上野真が加わる。 「どの方も、現役ピアニストとしても教育者としても活躍しておられます。2つの視点をもつ審査員から、コンテスタントが具体的なアドヴァイスを貰えるように、交流会も設けています」 審査委員によるコンサートはいまのところ未定だが、ファンとしてはぜひ実現してほしいところだ。 昨年の覇者である野上真梨子を始め、佐藤彦大(ひろお)、中桐望など、このコンクールから育った活躍中の若手は多い。今年はどんな才能が見出されるのか、注目したい。4/17(日)14:30 王子ホール問 プロアルテムジケ03-3943-6677 http://www.proarte.co.jp田口千晴(ピアノ) ~仲間と共に~ソロとアンサンブルで魅せる絶妙な音色使い文:飯田有抄 「仲間と共に」——そんな副題をもつリサイタルを、ピアニストの田口千晴が開催する。「仲間」とは、田口が東京芸大の附属高校・大学時代から大切にしてきた友人だ。田口が得意とするシューマンの作品から、ピアノ五重奏曲変ホ長調を山中光、硲美穂子(ヴァイオリン)、三木冬子(ヴィオラ)、津留崎直紀(チェロ)と共演する。国内外でのステージ経験・アンサンブル実績が豊富なメンバーが揃うだけに、一層の期待がかかる。前半の独奏では、リストがベートーヴェン記念碑建立募金の呼びかけをし、それにシューマンが貢献しようと書いた「幻想曲」を取り上げる。ボンの市庁舎前で、田口は実際にこのベートーヴェン像と出会い、改めてこの作品の世界を表現しようと思い至ったという。若き日のスクリャービンが過度な練習で右手を壊して書いた「左手のための前奏曲と夜想曲」、そしてソナタ第5番の放つ妖艶な世界にも、田口の柔らかに輝くような音色でたっぷりと浸りたい。

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 61

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です