eぶらあぼ 2016.3月号
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54 ©青柳 聡ストリングス・カレイドスコープ 弦楽万華鏡produced by 水谷川優子 ~ソロから6重奏まで~4/9(土)14:00 ヤマハホール問 ヤマハ銀座ビルインフォメーション03-3572-3171 http://www.yamaha.co.jp/yamahaginza/hall水谷川優子(チェロ)千変万化する弦のお祭り取材・文:宮本 明Interviewチェロの水谷川優子による『弦楽万華鏡』は、独奏(バッハ/無伴奏チェロ組曲第1番)から、ヴァイオリンとの二重奏(マルティヌー)、弦楽三重奏(ドホナーニ)、弦楽六重奏(チャイコフスキー/フィレンツェの思い出に)、つまり“1→2→3→6”と千変万化する弦楽がきらめく午後。 「豪華なメンバーがいろんな編成で登場するヨーロッパの音楽祭の雰囲気を、1回限りの公演で再現しようと考えました。贅を尽くした弦のお祭りだから、最後は弦楽六重奏曲の中でも最も華やかなチャイコフスキーです。ただし、あの『やっちゃえ!』みたいな華やかな最終楽章は、いろんなことを経験してきた晩年のチャイコフスキーだからこそたどり着いた世界だと思うのです。今回は大人のメンバーなので、それも一緒に噛みしめられそうです」 編成が変わればチェロの役割も変わる。それもまた「万華鏡」。 「私自身もチェロという楽器の多面性をすごく楽しんでいます。孤独だけれど自由で、いろんな役割を一人で担う完結したソロの世界。自分より高い声を持つ相手をサポートしながら1対1で対話するデュオ。そして三重奏の、どこに転ぶかわからない、「3」という数の不安定さ。四重奏の安定感とはまったく違う、三つ巴の危うさが面白さでもあります。六重奏は、というよりチャイコフスキーは、なにしろ“歌わせる作曲家”なので、チェロも上手に歌わせてくれます。イタリア・オペラのようなカンタービレがあったり。一方でチェロの醍醐味という意味では、一番下の第2チェロが、みんなを乗せて走ってるみたいでわくわくするんですけど、今回は大尊敬する渡邉辰紀さんにお願いして、彼の胸の中で踊らせていただこうと思います」 私生活でのパートナーでもあるマーク・ゴトーニ(ヴァイオリン)を始め、双紙正哉(ヴァイオリン)、柳瀬省太、安藤裕子(ヴィオラ)、渡邉辰紀(チェロ)。共演者への信頼は厚い。 「マークは私の人生の中で一番長く一緒に演奏している、最も信頼するヴァイオリニスト。彼も日本のメンバーと弾く機会は少ないので楽しみにしています。こんな素晴らしいメンバーで、ホールの響きに身を委ねてふくよかに歌い合うのはもちろん、どれだけ美しい弱音が出せるか、どこまでささやき合えるか、楽しみです」 双紙、安藤、渡邉は最後の六重奏だけの出演だから贅沢な起用だ。しかしさらに、「アンコールではもっと仕掛けがある、かも(笑)」というから楽しみはいや増す。3/25(金)19:00 紀尾井ホール問 紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061http://www.kioi-hall.or.jp紀尾井 明日への扉 11 藤元高こうき輝(ギター)古今のギターのための傑作が勢揃い文:笹田和人 いまキラリと光る若手アーティストが開く『紀尾井 明日への扉』。その第11弾に、卓越したテクニックと深みある音楽性で注目を浴びる、わが国ギター界期待の俊英・藤元高輝が登場する。東京都出身で3歳からギターを始め、東京音大で荘村清志に師事。東京国際ギター・コンクールなど数々の登竜門を制し、現在はケルン音大でさらなる研鑽を積んでいる。今回のステージでは、ダウランドやスカルラッティなど古典から、ソル、タルレガ、ファリャ、そしてヴィラ=ロボスまで、スペイン近代と南米のギターのための傑作がずらり。さらに、藤元が木下正道や川上統、植田彰へ委嘱した作品の初演・再演や、自らの編曲によるラヴェル「道化師の朝の歌」も交える。植田が「24時間、音楽のことばかり考えている。そういう奴です」と評する藤元の音楽世界の“いま”が、ぎゅっと凝縮されたようなラインナップ。俊英の指先が紡ぎ出す響きの力で、明日への扉を開け放つ瞬間を、ぜひとも目の当たりにしたい。

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