eぶらあぼ 2016.3月号
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49ミシェル・ベロフ(ピアノ)フランス音楽の大切な“心”文:高坂はる香ジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団2016年時空の旅文:柴田克彦3/17(木)19:00 すみだトリフォニーホール問 パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831 http://www.pacific-concert.co.jp第91回 東京オペラシティシリーズ4/16(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jpミシェル・ベロフが、得意とする近現代フランス音楽を集めたプログラムとともに来日する。ピアノファンにとって、実に楽しみな公演だ。 1950年、フランスに生まれたベロフは、若き日からメシアンと交流を持ち、17歳で第1回オリヴィエ・メシアン国際ピアノ・コンクールに優勝。その後19歳で録音したメシアンの「幼子イエスに注ぐ20のまなざし」が高く評価され、注目を集めた。卓越したリズム感と鋭い感性を持ち、さまざまな近現代作品を得意としているが、やはり中でもフランスものの解釈には定評がある。今回は、フランス近現代音楽の流れを辿るようなプログラムが用意されている。前半はフォーレのノクターンで始め、彼の弟子だったラヴェルがパリ国立音楽院在学中に師に捧げた「水の戯れ」などの若き日の作品、そしてドビュッシーを演奏する。後半では、卓 ノット&東響のコンビが、ますます刺激的だ。2014年東響の音楽監督に就任したノットは、意欲的な取り組みを続け、前任者スダーンに培われた精緻な構築に立体感を加えている。特に注目すべきは、清新なプログラミング。中でも、前半にリゲティ(100台のメトロノームの作品)→バッハ→R.シュトラウスを続け、後半にショスタコーヴィチを置いた昨年11月定期は、聴く者に類のないライヴ感覚をもたらした。 4月の東京オペラシティシリーズも然り。前半は、リゲティの「アトモスフェール」「ロンターノ」「サンフランシスコ・ポリフォニー」と、パーセルの「4声のファンタジア」の各曲が交互に間断なく登場し、20世紀のミクロポリフォニーと17世紀イギリス・バロックの典雅なポリフォニーの間をトリップさせる。共演は神戸愉樹美ヴィオラ・ダ・ガンバ合奏団。後半は、R.シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」。「アトモスフェール」と同曲が揃えば、映画「2001年宇宙の旅」の世界。これは21越したオルガン奏者だったフランクとメシアンを集め、「神秘的で確かな構造を持った作品をあわせて聴くことは興味深いはず」と語る。円熟期を迎えて奏でる「幼子イエスに注ぐ20のまなざし」(第19番・第20番)にはおのずと期待が高まる。 ベロフは長らく母校のパリ国立高等音楽院で教授をつとめており、フランス音楽の核心を継承する指導者としても重要な存在だ。昨年は門下のチョ・ソンジンがショパン国際ピアノコンクールで優勝したことも話題となった。フォーレに始まり、メシアンで閉じる今回のプログラムで、ベロフは自身まで脈々と受け継がれたフランス音楽の大切な心を、存分に披露してくれることだろう。世紀の“コスモ・プログラム”なのだ。 ノットの十八番であるリゲティの代表作3曲は、ベルリン・フィルとのCD(奇しくも01年録音)で、まさに宇宙的な美演を聴かせているから期待大。ちなみにノットは昨秋の記者会見で「パーセルを聴いた後にはリゲティの音楽のラインが聴き取りやすくなる」とも語っていた。そして「ツァラトゥストラ」は、彼いわく「様々な音楽のラインが交わることなく現代的な世界を形成する」作品。むろん前記の“精緻にして立体的な構築”が全開となる。ここは、ライヴでしか体感し得ない時空の旅を満喫しよう!ジョナサン・ノット ©K.Miura神戸愉樹美ヴィオラ・ダ・ガンバ合奏団
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