eぶらあぼ 2016.3月号
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45東京都交響楽団 プロムナードコンサート No.367“作品至上主義”の音楽づくり文:オヤマダアツシ及川浩治トリオ Bee “The Best of Bee”リクエストの多かった人気曲を一挙演奏!文:宮本 明3/19(土)14:00 サントリーホール問 都響ガイド03-3822-0727 http://www.tmso.or.jp3/25(金)19:00 サントリーホール問 チケットスペース03-3234-9999 http://www.ints.co.jp 小泉和裕が都響の指揮台に登場すると、いつにも増して腰を据えた真摯な音楽が生まれ、スコアそのものが語り出すという印象を受けるのは筆者だけだろうか。現在は終身名誉指揮者という肩書きをもつが、九響と名古屋フィルの音楽監督を務め(後者は2016年4月から)、仙台フィルと神奈川フィルでも客演指揮者のポストを得ているという人気ぶり。しかしその背景にあるのは「じっくりと」という言葉が似合う、作品至上主義の音楽づくりなのだ。 その小泉&都響コンビによる3月のプロムナードコンサートでは、ベートーヴェンの交響曲第2番と、R.シュトラウスの交響詩「ドン・キホーテ」が演奏される。実はこの2曲、前者は32歳、後者は33歳のときに初演されているのだ。ベートーヴェンの交響曲は、30歳を過ぎてようやく作曲家としての個性が際立ってきた時期の作品であり、意欲作となる第3番「英雄」へと向かう栄光のエキサイティングな室内楽のステージが3年ぶりに帰ってくる。活動20周年を迎えた人気ピアニスト及川浩治の呼びかけで2005年に結成されたピアノ三重奏ユニット「Bee」。神奈川フィルのカリスマ・コンサートマスター石田泰尚、30代のチェロ奏者を代表する逸材で日本フィル「ソロ・チェロ奏者」にも昨年就任した辻本玲。いずれも人気と音楽性を兼ね備えた実力者たちだ。09年から休止していた活動を2012年に再開したが、多忙なトップ奏者たちゆえか、コンサートは、またもや3年ぶり。顔ぶれから容易に想像できるように、彼らの室内楽は、あらかじめ予定された合意に淡々と向かうスタイルとは真逆。互いが火花を散らして攻めたうえで、ぎりぎりのバランスで成立する着地点をピンポイントで探る。そんなハラハラするような緊張感が充満する演奏が、多くのファンの心を掴んだ。 今期は結成10周年のシーズン。コンサートの副題に「The Best of Bee」と添えられているように、過去のコン階段。第1番で聴かせた古典派スタンダードへのちょっとした抵抗を、さらに推し進めた野心的な作品だ。一方の「ドン・キホーテ」は物語のフォーマットに乗せた壮大な変奏曲であり、首席チェリストの古川展生(ドン・キホーテ)サートの人気曲目を並べたというプログラムは、ピアソラの「アディオス・ノニーノ」「リベルタンゴ」に始まり、二重奏やピアノ・ソロも入れながら、最後はベートーヴェンのピアノ三重奏曲第5と首席ヴィオリストの店村眞積(サンチョ・パンサ)が、音楽で名コンビぶりを聴かせてくれるだろう。 どちらの作品も「揺るぎのない静かな自信」という言葉を想起するような音楽として、ホールに響くことだろう。番「幽霊」で締める。そう、「Bee」の命名の由来はベートーヴェンBeethovenの「Bee」だ。テンション高い演奏の合間にはトークも交えて進むスタイル。肩肘張らずに楽しもう。店村眞積 ©堀田力丸©兵庫県立芸術文化センター 撮影:飯島 隆 古川展生 ©Yuji Hori小泉和裕 ©堀田力丸

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