eぶらあぼ 2016.3月号
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43佐渡 裕(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団渾身の指揮で聴くロシアン・ロマンティシズムの世界文:江藤光紀ローター・ツァグロゼク(指揮) 読売日本交響楽団10年ぶりの来日で名匠が聴かせるドイツ・プロ文:江藤光紀第876回 オーチャード定期演奏会 3/6(日)15:00 Bunkamuraオーチャードホール第877回 サントリー定期シリーズ 3/7(月)19:00 サントリーホール第100回 東京オペラシティ定期シリーズ 3/10(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522 http://www.tpo.or.jp第590回 サントリーホール名曲シリーズ 3/10(木)19:00 サントリーホール第86回 みなとみらいホリデー名曲シリーズ 3/12(土)14:00 横浜みなとみらいホール第556回 定期演奏会 3/17(木)19:00 サントリーホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 http://yomikyo.or.jp 『題名のない音楽会』などでのフランクな立ち居振る舞いでお茶の間にも知られ、兵庫芸術文化センター管を人気楽団へと育て上げるなど、その手腕が高く評価されている佐渡裕。海外では昨秋よりウィーン・トーンキュンストラー管音楽監督に就任するなど、全方位での活躍が続く。 3月には東京フィルの定期に登場、2プログラム3公演を指揮する。全公演のメイン曲はラフマニノフ「交響曲第2番」。遅れてきたロマン主義者と言われるラフマニノフは、同時代のモダンな流行に背を向けメランコリックで甘美な歌を歌い続けた。全編厚塗りのオーケストレーションによって濃厚な叙情を描く第2番は、その代表作だ。近年の佐渡には、ほとばしるパッションに加え年齢にふさわしい重厚感も徐々に加わってきた。スコアにがっぷり四つに組み、東京フィルから深々とした響きを引き出してくれるだろう。 3月6日と7日は、コンサート前半にア 派手さはないが着実な仕事ぶりで安定した評価があり、気が付くと巨匠にふさわしい貫録を身に着けているアーティストがいる。70代半ばに入ってきたローター・ツァグロゼクは、これからそんなふうに評価される指揮者ではないか。若くしてパリ・オペラ座の音楽監督を務め、ナチ時代の作曲家に光を当てたデッカの退廃音楽シリーズでも高い評価を得た。シュトゥットガルト歌劇場時代には、リング4作それぞれに違う演出家を起用して話題を呼ぶ。これらが成功したのは、有能な指揮者あってこそだ。 そんなツァグロゼクが10年ぶりに来日、読響と初顔合わせする。3月10日と12日は、ブラームスの「悲劇的序曲」、「交響曲第1番」に挟まれる形で、R.シュトラウス「メタモルフォーゼン」が演奏される。第二次大戦末期、破壊された故郷を前に書かれたこの曲は、哀切の思いに満ちている。プログラムメリカの人気作曲家アダムズ「議長は踊る」、エマーソン「タルカス」の吉松隆編曲版が組み合わされる。とにかくリズミカルなコンビネーションで、佐渡の得意とするフィールドだから、そのノリに安心して身を委ねよう。 3月10日には、前半にラフマニノフの“白鳥の歌”、「交響的舞曲」が演奏される。3楽章で構成された30分以上の大作で、実質的な交響曲と言ってもいいだろう。この日は年に1度の佐(3月)渡(10日)の日。前半で悲劇が深まり、後半に昇華されるという筋書きか。 3月17日の定期は、ジョージ・ベンジャミンの「ダンス・フィギュアズ」日本初演で幕を開ける。ベルギー・モネ劇場などの委嘱で書かれたダンス音楽で、後に15分ほどの管弦楽ヴァージョンに編みなおされた。緻密なオーケストレーション、多彩なリズムが魅力だ。続いてコダーイ「ハーリ・ヤーノシュ組曲」、さらにベートーヴェン「英雄」。ほら話が大好きな老いぼれ農夫ハーリ・ヤーノいつにもまして高揚した佐渡のバトンが、ロシアの郷愁でホールをいっぱいに満たしてくれるはずだ。シュは、第4曲でナポレオンを捕虜にしてやったと自慢する。ベートーヴェンが「英雄」をナポレオンに捧げようとした逸話は、あまりにも有名だ。アイディアの光るプログラミングではないか。佐渡 裕 撮影:飯島 隆ローター・ツァグロゼク ©Christian Nielinger

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