eぶらあぼ 2016.3月号
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40ワルター・アウアー フルートリサイタル5/28(土)18:00 東京文化会館(小)問 プロアルテムジケ03-3943-6677 http://www.proarte.co.jpワルター・アウアー(フルート)ウィーンの奏者がフランスものも演奏するカラフルなプログラム取材・文:宮本 明Interview 持参した本誌1月号をめくる指が止まる。「あ、エイジさん(大植英次)! ウィーンの前は、彼が首席指揮者を務めていたハノーファーのオーケストラにいたから、よく知っていますよ」 2003年に首席フルート奏者としてウィーン・フィル(VPO)に入団したワルター・アウアー。オーケストラで、オペラで、ソロでと、今年はなんと4度も来日する。5月の東京文化会館でのリサイタルは、前半がルーセル、フォーレ、プーランクなどのフランス系。後半はチャイコフスキーの「レンスキーのアリア」とR.シュトラウスのソナタ(ヴァイオリン・ソナタ)という曲目。 「このプログラムは今回が初めて。とても気に入っています。曲目構成で注意するのは、自分が吹きやすい曲ばかりを並べてしまわないこと。常に新しいものを入れてわざと自分に負荷をかけています。日本ではどうしても古典派ばかりになることが多いですが、ウィーンの奏者がフランス音楽を吹くのも面白いと思いませんか? フランス音楽とシュトラウスとで、まったく違う世界を生み出せれば、とてもカラフルになると考えています。チャイコフスキーを橋渡しに、フランスからウィーンに帰ってくる感じですね。シュトラウスがしゃぶしゃぶだとすると、前半は刺身とお寿司でしょうか。日本食? もちろん大好きです。納豆もイナゴも食べますよ(笑)」 2006年から日本の三響製の楽器を使用。 「今では、VPOの首席フルート奏者は全員日本の楽器を使っています。三響、ムラマツ、ヤマハ。中音域をメゾフォルテで吹くだけだったら、特別な楽器はいりません。大事なのは、極限を超えたところでどれくらいの可能性を持っているか。僕の楽器は、F1マシンのようなものです。だから“ドライブする”のは大変なのですが、出てくる音色は大変気に入っています」 VPOが伝統の音を守るために使用する楽器を代々受け継いでいるという話は有名だが、彼によると、現在では弦楽器も含めて各自がそれぞれの楽器を使っているとのこと。「大事なのは楽器ではなく演奏者です。一人ひとりがVPOの伝統の音を守っています」 VPOメンバーによる「ウィーン・クリムト・アンサンブル」も主宰する。 「室内楽はとても大事。オーケストラは80人で弾く室内楽ですからね。みんなが室内楽で学んだことを持ち帰れば、より弱点のないアンサンブルになる。全員がすべてのポジションをこなすFCバルセロナのようですね」フルマラソンを3時間30分台で走り、バカンスにはアルプスをスキーで滑走するトップ・フルート奏者は、サッカー好きでもあるらしい。3/26(土)14:00 神奈川県民ホール(小)問 チケットかながわ0570-015-415 http://www.kanagawa-kenminhall.comチェンバロの魅力 Ⅳ Dダンセanser~舞うチェンバロとダンスの深い関わりを探る文:笹田和人市瀬陽子大塚直哉 ©R.Hotta 『チェンバロの魅力』は、ソリストとしてはもちろん、アンサンブルのリーダーや通奏低音奏者として活躍し、さらにはメディアを通じての啓蒙活動にも力を注ぐ大塚直哉の演奏とトークにより、楽器自体から楽曲の背景まで、多面的にその秘密を掘り下げてゆくシリーズ企画。その第4弾は、バロック・ダンスの市瀬陽子を迎えて。チェンバロ音楽の中心的存在である「舞曲」をテーマに、バッハ「フランス風序曲」やデュフリ「シャコンヌ」、ダングルベール「組曲第2番『アルミード』のパッサカリア」など、市瀬のダンスを交えて披露、音楽表現と身体表現の密接な関係性を探る。「鍵盤を弾く、といった作業とは一見かけ離れているかのように思われる“踊る”という行為が、こんなにも深くチェンバロの音楽と結びついていることは、改めて考えると、驚くべきことなのかもしれません」と大塚。 終演後は、大塚と市瀬による、チェンバロとバロック・ダンスの公開レッスンも予定されている。

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