eぶらあぼ 2016.3月号
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38上岡敏之(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団2大作曲家の“第1番”文:オヤマダアツシ高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団宗教音楽家としてのドヴォルザークの真価を伝える文:飯尾洋一#556定期演奏会 3/16(水)19:15 サントリーホール 問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 http://www.njp.or.jp他公演 3/17(木)倉敷市民会館(くらしきコンサート086-422-2140)、3/18(金)ザ・シンフォニーホール(リバティ・コンサーツ06-7732-8771)第296回 定期演奏会 3/18(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール 問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 http://www.cityphil.jp 2016年の9月、新日本フィルの新しいシーズン開幕に伴い音楽監督に就任する上岡敏之。ドイツの歌劇場やオーケストラで実績を積み上げ、音楽監督を務めているヴッパータール響の来日公演や国内オーケストラへの客演時には、スコアを再検証し、作品に新たな光を当てるような演奏を聴かせてくれた。昨年の年末も読響の「第九」公演を指揮し、予想だにしなかった快速テンポで繰り出される衝撃的な演奏で話題をさらったばかりだ。その上岡が、音楽監督就任を発表してから初めて新日本フィルの指揮台に立つとあっては、これからを占う公演として聴き逃すことはできないだろう。サントリーホール定期で演奏される曲は、シューベルトの交響曲第1番とマーラーの交響曲第1番。どちらも若さを放出するような音楽であり、春の香りが漂ってきそうな3月中旬にふさわしい。シューベルトの作品は16歳のときに書かれた習作であるものの、聴いて 東日本大震災からまもなく5年が経とうとしている。3月になると祈りの音楽に耳を傾けたくなるという方も多いのではないだろうか。東京シティ・フィルが3月18日の定期演奏会に演奏するのは、ドヴォルザークの「レクイエム」。常任指揮者高関健の指揮のもと、東京シティ・フィル・コーアの合唱と実力者ぞろいの独唱者陣とともに、鎮魂の祈りを捧げる。 ドヴォルザークの「レクイエム」という選曲は目をひく。古今のレクイエムのなかで決して人気作とはいえないものの、敬虔なカトリック信者であったドヴォルザークならではの渾身の意欲作みるとハイドン、ベートーヴェンからの流れを確実に感じさせる曲。初めて聴く方は「なぜ、こんなにいい曲が演奏されないのだろう」と、疑問に思うかもしれない。マーラーは指揮者にとってもオーケストラにとっても、名刺代わりに相応しい作品。上岡の個性的な音楽作りと、それを受けてヴィヴィッドに反応する新日本フィルが、はたしてどのようなマーラーを聴かせるのか。である。 ドヴォルザークが「レクイエム」を作曲したのは1890年、49歳の年。交響曲第8番を書きあげた翌年にあたる。たびたびイギリスを演奏旅行で訪れて暖かく迎えられていたドヴォルザークは、バーミンガム音楽祭からの依頼にこたえて、この年の大半をかけてレクイエムを完成させた。1876年に「スターバト・マーテル」が作曲された際には、娘が世を去ったことへの悲しみが新時代を迎えるプレ・コンサートとして、期待満載の一夜である。作品に投影されていたが、この「レクイエム」に関しては作品に直結するような個人的な悲劇は見当たらない。むしろ、作曲家として名声を高めた幸福な時代に生まれた円熟期の作品といえる。 敬虔さと詩情豊かさが一体となったレクイエムが、宗教音楽作曲家としてのドヴォルザークの真価を伝えてくれることだろう。ソリストは中江早希(ソプラノ)、相田麻純(メゾソプラノ)、山本耕平(テノール)、大沼徹(バリトン)。上岡敏之 ©大窪道治大沼 徹山本耕平相田麻純中江早希 ©Shigeto Imura高関 健 ©Masahide Sato

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