eぶらあぼ 2016.3月号
39/217
36©北山宏一中嶋朋子が誘う 音楽劇紀行 バロック・オペラからミュージカルへ ~音楽劇の歴史を追う 第一夜 声の物語化~グレゴリオ聖歌、バロック・オペラ5/11(水)14:00(追加公演) 19:00(完売)問 Hakuju Hall チケットセンター03-5478-8700 http://www.hakujuhall.jp中嶋朋子(女優)歌の変遷を通じて音楽の知識を深める新シリーズ始動!取材・文:オヤマダアツシInterview 女優の中嶋朋子が案内人を務め、総合プロデューサーの田尾下哲や音楽監督の加藤昌則らとチームを組んで音楽劇の歴史をたどるHakuju Hallの『音楽劇紀行』シリーズ。3年間で全6回、多彩な歌手たちが次々に出演し、歌の変遷を通じて音楽の知識を深めるという企画だが、「なるほど!」という発見に満ちたひとときになりそうだ。そうした予感を裏付けるように、早くもシリーズ初回(5/11夜公演)のチケットは完売。急遽、同日の14時から追加公演が行われることになった。 初回は、中世のグレゴリオ聖歌からバロック・オペラを中心に、ミュージカルまで幅広い時代の音楽を俯瞰する。出演は、ヴォーカル・アンサンブル カペラ、藤木大地(カウンターテナー)、森谷真理(ソプラノ)、中川晃教(シンガーソングライター)ら。すでに出演者およびスタッフが集まっての「勉強会」も開催。ステージでは音楽劇の案内役となる中嶋朋子も、そこで知識やアイディアを得ることが楽しくて仕方がないらしいのだ。 「これまではときどきオペラなどを観ながら『素敵ねえ』と楽しむくらいで、音楽に関する専門的な知識はありませんでした。ですから勉強会で教えていただくすべてが新鮮で、しかも演劇とつながることも多く『そういうことだったのか!』という発見ばかり。グレゴリオ聖歌の時代から現代まで、その時代を生きた人たちのさまざまな欲求によって音楽が生まれ変わってきたこともわかり、あらためて歴史の流れを体感しているところです。時代が進むにつれて音の層が厚くなってきたり、メロディラインが変化してきたこともわかりますので、特に歴史を紐解くような第一夜は、私自身が『なるほど』と思っている気持ちをお客様にも体験していただけるでしょう」 Hakuju Hallでの公演は2010年の『ジュリエット・コラージュ』以来。「反響が豊かなので言葉を粒立たせるのは難しいけれど、とても濃密な空間で心地よく音楽と一緒にたゆたうことができる」と言う。また、チェンバロなどの楽器をこのコンサートで実際に聴けることが、何よりの楽しみでもあるとか。 「大好きな作家の一人である小川洋子さんがチェンバロの製作者を題材にした作品をお書きになっていたり、私自身も楽器製作者のドキュメンタリーでナレーションを担当したこともありましたから、ずっと楽器の美しさに魅了されていました。音楽家の方は楽器を演奏したり歌ったりする前にチューニングをされますが、それはお芝居のときに役作りなどを突き詰めていく作業と似ています。今回は響き合うことを楽しめる方々との共演なので、きっと本番の直前まで変化していくのだろうなと思いますし、シリーズの2回目以降も新しいことが試されていくでしょうね。私もお客様と共鳴したいですし、音楽を発見する喜びをホールで一緒に体感したいと思っています」シリーズ全般をじっくり味わうためにも、初回は必見・必聴。音楽劇を探求する楽しみが、手に取るようにわかるだろう。3/24(木)19:00 トッパンホール問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 http://www.toppanhall.com〈歌リート曲の森〉~詩と音楽 Gedichte und Musik~第19篇クリストフ・プレガルディエン(テノール) & ミヒャエル・ゲース(ピアノ)シューベルト「水車屋の美しい娘」深い知性に支えられた熟成の歌唱文:宮本 明左:クリストフ・プレガルディエン 右:ミヒャエル・ゲース 深く透明な声にいったん沈潜させた言葉を、そっと丁寧に掬い取れば美しい歌になる。テキストの意味を、過度に表現する必要はない。クリストフ・プレガルディエンの歌曲を聴く時、いつもそう思う。19回目を迎える、トッパンホールの好評シリーズ『歌曲(リート)の森』に、最多となる3年連続6回目の登場だ。現代を代表する至高のテノールが、こんなに頻繁に日本を訪れてくれていることに感謝。歌うのはシューベルト「水車屋の美しい娘」。最近は息子ユリアンも美声のテノールとして頭角を示しているが、日本流に言えば1月で還暦を迎えた父クリストフに、老いの気配はまだまだ感じられない。今回も青春の甘さと苦さを、若々しくストレートに伝えてくれるに違いない。ピアノは、これまたすっかりおなじみのミヒャエル・ゲース。フォルテピアノのアンドレアス・シュタイアーと並んで、プレガルディエンが最も長く共演し信頼している名手。稀有な感興と出会う一夜。
元のページ