eぶらあぼ 2016.3月号
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35キム・カシュカシアン(ヴィオラ) & レーラ・アウエルバッハ(ピアノ)新しい“受像”の手段を届けたい文:江藤光紀山田和樹(指揮) バーミンガム市交響楽団待望の共演が遂に実現!文:飯尾洋一3/29(火)19:00 王子ホール問 王子ホールチケットセンター03-3567-9990 http://www.ojihall.jp6/28(火)19:00 サントリーホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp※全国公演の情報は上記ウェブサイトでご確認ください。 縁の下の力持ちのヴィオラが独奏楽器として認知されるようになったのは、そんなに昔のことではない。80年代から活動を始めたキム・カシュカシアンは、そんなヴィオラの魅力を開拓してきた伝道師の一人だ。バッハから現代曲まで幅広いレパートリーを懐深い音で聴かせてくれる。 今回の王子ホールでのリサイタルは、ヴィオラの表現領域をまた一つ押し広げる仕事となるのではないか。伴奏を務めるレーラ・アウエルバッハはピアニスト・作曲家としてだけでなく、詩人や美術アーティストとしても活躍する才媛。プログラムは彼女との密度の濃いコラボをうかがわせるものだ。 まずはショスタコーヴィチ「24のプレリュード」。平均律の全ての調を経巡りつつピアノの表現力を引き出した作品だが、今回披露されるヴィオラとピアノ版への編曲もアウエルバッハが手掛けた。続いてドヴォルザーク「ヴァイオリン 世界を舞台に破竹の勢いで快進撃を続ける山田和樹が、この6月にバーミンガム市交響楽団と来日公演を行なう。楽しみな顔合わせが実現した。 バーミンガム市交響楽団といえば、かつて若き日のサイモン・ラトルを音楽監督に抜擢して、その評価を飛躍的に高めたオーケストラである。当時まだ25歳の若者だったラトルを招いたのは1980年のこと。その後、ラトルはベルリン・フィルのシェフに就任するなど大指揮者への道を歩んでいるが、一方、バーミンガム市交響楽団も指揮者選びに関しては慧眼ぶりを発揮している。ラトルの次はサカリ・オラモ、さらに続いてはアンドリス・ネルソンスと、その時点での若手の実力者をシェフに据えてきた。ネルソンスがボストン交響楽団へ移り、現在のところ音楽監督のポストは空席となっているが、来日公演にあたって山田和樹と共演するというのは、実にこの楽団にふさわしい選択といえるのではないだろうか。とピアノのためのソナチネ」。「新世界より」や「アメリカ」などと同じ年に作曲されており、シンプルな歌からドヴォルザークらしい郷愁が立ち上ってくる。 後半はアウエルバッハがカシュカシアンのために書いたソナタ「アルカヌム」が演奏される。2013年にスイスで初演され、すでに録音もなされているようだ。重厚で奥深い表現力を持つこのロシア系作曲家は、カシュカシアンのヴィオラを通じて何を語るのだろうか。 「コンサート体験を通じてレンズとミラー、そして新しい“受像”の手段を、リ プログラムはベートーヴェン「劇音楽『エグモント』序曲」、ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番」(ピアノ:河村尚子)、ベートーヴェン「交響曲第7番」。ベートーヴェンの第7番は、今や来日オーケストラがこぞってとりあげる人気曲だスナーの耳と心と精神に届けたい」(カシュカシアン)。朴訥とした東欧のメロディからコンテンポラリーの創造まで、個性豊かなアーティストの音の対話を楽しみたい。が、山田和樹がこの名曲とどう向き合うのかも興味深いところ。昨年、日本フィルでベートーヴェンの交響曲第1番を指揮した際は、往年の巨匠風の解釈で驚かせてくれたが、果たして今回はいかに。キム・カシュカシアン ©Steve Riskindレーラ・アウエルバッハ ©F.Reinholdバーミンガム市交響楽団 山田和樹 ©Yoshinori Tsuru

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