eぶらあぼ 2016.3月号
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178CDCDCDCDザ・ベスト・オブ・ギター 60thアニバーサリー/福田進一スメタナ:連作交響詩「わが祖国」(ピアノ連弾版)/稲島早織&大石真裕メンデルスゾーン:交響曲第1番・第5番「宗教改革」/沼尻竜典&日本センチュリー響カール=ハインツ・シュッツ plays バッハ・ソロダウランド:涙のパヴァーヌ/J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番プレリュード、「主よ、人の望みの喜びよ」/ソル:12のメヌエット第3番/タレガ:グラン・ワルツ/ファリャ:粉屋の踊り/ヴィラ=ロボス:5つの前奏曲第5番 他福田進一(ギター)スメタナ:連作交響詩「わが祖国」(作曲者自身によるピアノ連弾版)稲島早織・大石真裕(ピアノ)メンデルスゾーン:交響曲第1番・第5番「宗教改革」沼尻竜典(指揮)日本センチュリー交響楽団J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番・第2番、フルート・ソナタBWV1033、無伴奏フルートのためのパルティータ/C.P.E.バッハ:無伴奏フルート・ソナタWq.132/H.562カール=ハインツ・シュッツ(フルート)マイスター・ミュージックMM-3068 ¥3000+税コジマ録音ALCD-7196 ¥2800+税収録:2014.8/2、びわ湖ホール(ライヴ) 他オクタヴィア・レコードOVCL-00585 ¥3000+税カメラータ・トウキョウCMCD-28329 ¥2800+税昨年還暦を迎えた福田進一。1996年からマイスター・ミュージックで録音している彼にとって、今年は福田の同レーベル・デビュー20周年にもあたるため、このベスト盤は“2つの記念”を兼ねている。選曲(全15曲)は自身によるもので、バロック、ロマン派、スペイン、南米と、レパートリーの広さに改めて驚かされる。福田もライナーノートで述べているが、当盤は作品だけでなく、10種類の異なるギターを駆使した音色の違いも聴きどころ。近年のJ.S.バッハ録音の相棒である日本製の楽器や、ソルのメヌエットで使用している19世紀のオリジナル楽器など、名器のカラフルな饗宴も楽しめる。(渡辺謙太郎)連作交響詩「わが祖国」の、スメタナ自身によるピアノ連弾編曲版。桐朋学園大学と同研究科で学んだ稲島早織と、同大学卒業後、昨年までプラハ音楽院に留学していた大石真裕による、清々しくダイナミックな演奏が収められている。弾むようなタッチが、ボヘミアの情景や人々の間で受け継がれてきた物語を、鮮やかに、ドラマティックに描き出す。オーケストラの表現を彷彿とさせる部分もありながら、主にはピアノの音の魅力と表現力を最大限に生かす形で、音の層を重ね、深い色彩を再現している。息の合った若い二人の鳴らす音は、刺激的でとても気持ちが良い。壮大な風景を目前に再現してくれる。(高坂はる香)沼尻&日本センチュリー響によるメンデルスゾーン・シリーズの完結編。第1番がセッション、第5番がライヴ録音だが、いずれも同楽団の充実ぶりを実感させる好演だ。全体を通じて、沼尻のナチュラルな音楽作りと、しなやかでコクのある弦楽器群のサウンドが光っている。特に第1番は、切れ味と推進力抜群の第1楽章、柔らかな弦と繊細な木管が美しく綾なす第2楽章…。以下、生気溢れる演奏が続き、15歳の天才が書いた同曲の魅力を再認識させられる。5番もバランスのとれた構築がなされ、節度のある金管群も品のよい表現に寄与。全集を離れても一聴の価値ある1枚。 (柴田克彦)ウィーン・フィル首席を務める名フルーティストによる、バッハ父子の無伴奏作品集。フルートのオリジナルに、チェロ組曲からの編曲などを交える。美音は言わずもがな。きっちり踏まえた様式感や、時折り交える装飾の自然さもすばらしい。中でも、本来なら通奏低音を伴うはずの父バッハのソナタハ長調(BWV1033)へ、あえて上声だけで挑むことで呼び起こす、不思議な静謐さ。そこへ、ソリストが通奏低音も演じる、無伴奏チェロ組曲が深く共鳴。さらに、チェロの弓遣いをトレースした上で、ブレスという管楽器特有の“癖”すらも美点へと昇華し、「フルートで奏すること」の意義を示す。(寺西 肇)

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