eぶらあぼ 2016.2月号
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59御喜美江(アコーディオン) アコーディオン・ワークス2016『春・新しい世界へ』バッハとピアソラにときめく!文:寺西 肇3/19(土)14:00 浜離宮朝日ホール問 クリスタル・アーツ03-6434-7997 http://www.crystalarts.jp クラシック・アコーディオンの世界的な名手として、深い芸術性を追求する中から、楽器自体のイメージをも覆した御喜美江。「この音楽なしに生きていけない」というバッハ、そして、「私の空気、水、光」と表現するピアソラ、彼女の代名詞とも言える2人の作曲家に焦点を当てたステージ「アコーディオン・ワークス2016『春・新しい世界へ』」に臨む。 ドイツ・ハノーファー国立音大に学び、1973年から2年連続でクリンゲンタール国際アコーディオン・コンクールを制し、現在はフォルクヴァンク芸術大学の副学長を務めるなど、後進の育成にも尽力。今回は、ピアノの名匠ゲオルク・フリードリヒ・シェンクや、若い弦楽四重奏団「ディノカルテット」と共演する。 前半では、バッハを特集。「アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帳」や「平均律クラヴィーア曲集」全2巻からの名曲をソロで披露するほか、アンサンブルと共に「ブランデンブルク協奏曲第3番」も。「バッハとの出会いがなかったら、クラシック音楽を本格的にやらなかったかもしれない。私にとって、バッハは決定的な存在だった」と御喜は語る。 そして、後半では、かつて武満徹から紹介され、やがて夢中になったと言うピアソラの作品を。「ピアソラ音楽の心と私の心は、なぜかはよくわからないが、いつも繋がる」と御喜。バッハとの出会いと同じ感動を覚えたという「バチンの少年」をはじめ、「セーヌ川」「最後の嘆き」などをソロ、さらにアンサンブルと共に傑作「バンドネオン協奏曲」に挑む。©Marco Borggreveドミトリー・キタエンコ(指揮) 東京交響楽団今こそ耳を傾けたいロシア音楽の正道文:柴田克彦第638回 定期演奏会 3/26(土)18:00 サントリーホール第54回 川崎定期演奏会 3/27(日)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jp まわりに“豪放”や“熱狂”を指向する指揮者が多いなか、造型確かで丁寧な音楽を作り続ける…。かような指揮者は、歳を重ねて傾聴すべき名匠と化すことが多い。ドミトリー・キタエンコもその一人だ。1940年ロシア生まれの彼は、76~90年モスクワ・フィルの首席指揮者として名声を得ながら、同国の指揮者には珍しく過剰な表現に走らず、流麗で目配りの利いた音楽を聴かせてきた。その後はフランクフルト放送響、ベルゲン・フィル、ベルン響の首席指揮者を歴任。2009年ケルン・ギュルツェニヒ管の名誉指揮者(過去ヴァントのみのポスト)、12年ベルリン・コンツェルトハウス管の首席客演指揮者に就任するなど、西欧の実力派オーケストラより厚い信頼を得ている。 3月の東響定期には、そのキタエンコが登場する。06年に始まる共演は今回が4度目。前回13年には、ラフマニノフの交響曲第2番の壮大なロマンと多様な移ろいを見通しよく表現し、聴く者に無類の充足感をもたらした。やはり堅牢で誠実な東響との相性は抜群。今回もお国のロシアもので魅了する。演目は、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲、ショスタコーヴィチの交響曲第5番ほか、文句なしの名曲揃い。協奏曲では、ロン=ティボー、エリザベート王妃両国際コンクールで第2位を受賞後、内外で活躍を続ける成田達輝が、高度なテクニックと雄弁な語り口を披露。こちらも大いに期待したい。そしてショスタコの5番は、シリアスにも華麗にもなるこの曲を、真摯なロシア人指揮者がいかに表出するのか? が注目される。 ここは、円熟のタクトが紡ぐ名作で、真の感銘を体感しよう。成田達輝 ©Tetsuri Kanekoドミトリー・キタエンコ
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