eぶらあぼ 2016.2月号
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54すみだ平和祈念コンサート2016ウィーン楽友協会合唱団 モーツァルト「レクイエム」音楽の原点を思い起こさせる深い味わい文:宮本 明彩の国さいたま芸術劇場シリーズ企画「次代へ伝えたい名曲」第6回 小山実稚恵 ピアノ・リサイタル変幻自在な音の色彩に満ちあふれる文:道下京子2/24(水)19:00 すみだトリフォニーホール問 トリフォニーホールチケットセンター03-5608-1212 http://www.triphony.com3/5(土)14:00 彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール問 彩の国さいたま芸術劇場0570-064-939 http://www.saf.or.jp/arthall ウィーン楽友協会合唱団が「モツレク」を引っさげて来日する。ブラームス「ドイツ・レクイエム」の初演、カラヤンやアバドら巨匠との共演など、1858年創立以来、輝かしい歴史に彩られた合唱団だ。ウィーン楽友協会の芸術監督であったブラームスは同合唱団の芸術監督兼クワイヤー・マスターでもあり、その厚みのある真摯な歌声には音楽の原点を思い起こさせるような深い味わいがある。 すみだトリフォニーホール公演での注目は、1987年生まれの日本人指揮者・鬼原良尚(きはらよしなお)の起用だ。2006年に東京芸大付属音楽高校ピアノ科卒業後、ウィーンとグラーツで指揮とピアノを学び、現在もグラーツ在住。長らく小澤征爾のアシスタントを務め、08年の小澤征爾音楽塾コンサートの指揮者に抜擢されたり、14年に「東京カンタート第4回若い指揮者のための合唱指揮コンクール」で1位となり、披露公演を指揮するなど日本での活動履歴もあるが、実質的にはこれ 彩の国さいたま芸術劇場のオリジナル企画『次代へ伝えたい名曲』。日本のクラシック音楽界の頂点に立つアーティストが、みずから選りすぐった「次代へ伝えたい名曲」を贈るシリーズだ。 第6回に登場するのは、昨年デビュー30周年を迎えた小山実稚恵。チャイコフスキーとショパンの両コンクールに上位入賞後も着々とキャリアを重ね、みずからの音楽の世界を一層深化させている。 このシリーズのために小山が用意したのは、ロマン派に始まりロマン派で結ばれるプログラムだ。それぞれの作品の響きを思い浮かべて曲を決めていったという。彼女が愛してやまないシューベルト、そしてブゾーニ編曲のバッハ「シャコンヌ」をリサイタル前半に置く。また、本シリーズではこの半世紀以内に創作された曲を取り入れが凱旋デビュー公演と言って差し支えないだろう。新鋭がヴェールを脱ぐ。 今回はオーケストラではなく、オルガン伴奏による演奏。1976年生まれのオルガン奏者ロベルト・コヴァチは、コンサート・オルガニストとして、アウグスティーナ教会やシュテファン大聖堂の教会オルるというルールもあり、彼女は武満徹編曲のビートルズ「ゴールデン・スランバー」を選曲。この作品について「何かが琴線に触れ」、響きが「バルトークのソナタの後に合うと直感した」という。後半はバルトークとビートルズから、彼女の得意なショパン作品につながっていく。 小山の演奏は詩情に富み、変幻自在な音の色彩に満ちあふれている。ロマン派の作品では彼女の柔軟にして研ぎ澄まされた感性が、バルトークなどではリズムの切れ味のよい明晰な表現が示されるであろう。ガニストとして、ウィーンを代表する奏者だ。ソリストには松田奈緒美(ソプラノ)、金子美香(アルト)、大槻孝志(テノール)、河野克典(バリトン)ら実力派が集結、合唱団とともに祈りの歌を紡ぐ。「レクイエム」のほか、メンデルスゾーンやブルックナーの合唱作品も披露される。 「未知への世界への期待が膨らむ」と小山が語るこのリサイタルで、わたしたちは彼女の新たな一面に触れることになる。© ND CHOWウィーン楽友協会合唱団鬼原良尚

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