eぶらあぼ 2016.2月号
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46狂言風オペラ《コジ・ファン・トゥッテ》モーツァルトと狂言が生み出す新たなシアターピース文:宮本 明sonorium「映像と音楽」 共催シリーズ2016歌と美しい映像のマリアージュ文:笹田和人2/25(木)19:00 すみだトリフォニーホール問 マルタミュージックサービス047-335-2002他公演2/20(土)豊田市コンサートホール、2/21(日)宗像ユリックスハーモニーホール、2/23(火)津山文化センター、2/24(水)NHK大阪ホール、2/27(土)ひこね市文化プラザ グランドホール問 ヴォイシング06-6451-6263井上雅人バリトンリサイタル2/28(日)14:00 18:00 sonorium 問 sonorium 03-6768-3000他のシリーズ公演3/19(土) 音絵本 vol.3、4/9(土) 天平ピアノコンサート『Vision』、5/14(土) STAGE 5.14 sonorium、6/18(土) oblivion vol.3~藍 ai の刻~、7/2(土) Ami & Ali ピアノとステンドグラスの饗宴『音の形、色の響き』、7/30(土) CDリリース記念 『琴線に響く心の音楽物語』 http://www.sonorium.jp 「狂言風オペラ」がじわりと話題だ。「オペラ」といっても歌はない。管楽八重奏版編曲の音楽に乗せて大蔵流狂言の茂山一門が演じる、いわばオペラを狂言風に脚色した音楽芝居。2002年から続くプロジェクトで、これまで《フィガロの結婚》《魔笛》《ドン・ジョヴァンニ》とモーツァルト作品を取り上げており、今回は《コジ・ファン・トゥッテ》を上演する。 初回から出演するドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン管楽ゾリステンは、「ハルモニームジーク」と呼ばれて18世紀にはオペラの宣伝用にも流行したこの管楽八重奏形態の復活を活動の軸にしており、その模索の中で辿り着いたのが狂言とのコラボだった。これが驚くほどハマった。狂言の改革者だった故・茂山千之丞が「もっと早くモーツァルトと出会いたかった」と感嘆。一方で11年のドイツ公演が各地で激賞を浴びるなど、狂言、オペラ双方の伝統が、その抜群の相性を認めたのだ。 今回の注目は、落語家の桂米團治 sonoriumは東京・永福町の閑静な住宅街の一角に佇む、理想的な音響とモダンでありながら温かな雰囲気を兼ね備えた小ホール。ここを舞台に2010年から選考企画7作品に共催補助金を提供して、2月~7月の期間に開催されている『映像と音楽』は、ステージ後ろの高さ6メートルの白壁をスクリーンとして美しい映像を投影し、質の高い演奏と共に楽しむシリーズ公演で、今までになかった“新しい演奏会”として、聴衆から高い支持を得ている。 7年目の2016年は、バリトンの井上雅人のリサイタル2公演(2/28)で幕開けする。山形県出身、東京芸大を経てフィンランドで歌曲などを学んだ井上。二期会などオペラの他、宗教声楽曲などでも名唱を披露し、15年3月にはデビュー10周年を迎えた。今回のピアノは活躍中の小瀧俊治。第1部では、舞台写真などをバックに、ベッリーニ《清教徒》から〈ああ永遠に君を失った〉(昼の部)やワーグナー《タンホイザー》から〈夕星の歌〉(夜による脚本・演出(当初発表から変更)。モーツァルトの生まれ変わりを自称し、大のオペラ・ファンでもある米團治は、古典を学ぶために千之丞に能楽を師事した経験もあり、「やっと恩返しができる」と意気込む。まさにうってつけの人選だ。出演は茂山正邦、茂山童司ら第一線の狂言役者が揃った。 大阪公演は高校生以下1,000円、東の部)など名アリアをソロで歌うほか、盟友であるバスのジョン・ハオ(昼の部)やテノールの村上公太(夜の部)をゲストに迎えて、重唱も披露。第2部はソプラノの金持亜実らと共に、プッチーニ《トスカ》の名場面を、オペラセットさながらの映像とともに演じる。 今年の同シリーズではこのほか、新垣隆らの出演による『音絵本 vol.3』(3/ 京・大阪以外の4公演は最高席が4,000円と、リーズナブルな価格もうれしい。600年の伝統を誇る日本最古の喜劇とモーツァルトの笑いが交差して、新しいスタイルの喜劇が生まれる。19)やコンポーザー・ピアニスト中村天平による『Vision』(4/9)、ヴァイオリン中澤万紀子とナビゲーターのユニットによる『STAGE』(5/14)、ピアノ中山久美とチェロによる『藍 ai の刻』(6/ 18)、ピアノ水永亜実子とステンドグラス作家の饗宴(7/2)、フルート高橋詩織の『琴線に響く心の音楽物語』(7/30)と7企画が決定している。茂山童司茂山正邦桂米團治井上雅人ジョン・ハオ村上公太小瀧俊治
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