eぶらあぼ 2016.2月号
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44広上淳一(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団アッテルベリ「ドル交響曲」を“伝道師”の指揮で文:江藤光紀秋山和慶(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団華麗なタクトで響くブラームスの傑作文:飯尾洋一#554定期演奏会2/19(金)19:15、2/20(土)14:00 すみだトリフォニーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 http://www.njp.or.jp2/19(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 http://www.cityphil.jp 舞台に出るのも自然体、解釈も力んだところがなく、オーケストラの持ち味をリラックスして引き出す広上淳一。ホールを元気にするパワーで、今日も日本全国を駆け巡っている。 2月の新日本フィル定期には、ちょっとひねった北欧プロで登場。メインに置かれた「ペール・ギュント」組曲は、誰もが知る名曲。放浪男のうらぶれていく生涯を描いたイプセンの原作に、若きグリーグが劇音楽をつけた。爽やかな朝の情景や母との死別を嘆いた「オーセの死」、不気味な音楽の代名詞「山の魔王の宮殿にて」など、後に編まれた2つの組曲はそのエッセンスを伝えている。 一方、冒頭におかれているのはスウェーデンのクルト・アッテルベリ(1887~1974)の交響曲第6番。特許庁の職員として働く傍ら、9曲の交響曲に5作のオペラと、創作活動も旺盛に行った。第6番もわかりやすい旋律を軸としたロマン派風の作風が、北欧らしい清々しさ 卓越したバトン・テクニックの持ち主として、まっさきに思い出されるのが秋山和慶。指揮姿を見ているだけでも音楽が雄弁に伝わってくるような名匠である。2014年に指揮生活50周年を迎え、ますます旺盛な指揮活動がくりひろげられているが、この2月には東京シティ・フィル定期演奏会の指揮台に登場する。 プログラムは、江口玲をソリストに迎えたブラームスのピアノ協奏曲第2番と交響曲第3番。ともにブラームス最盛期の傑作といってもよいだろう。1881年、避暑地プレスバウムでの夏の休暇に完成されたピアノ協奏曲第2番と、その2年後である83年にヴィースバーデンでの夏の休暇に書かれた交響曲第3番。両者には作曲時期の近さだけではなく、のびやかな抒情性や開放感、清冽なロマンティシズムといった共通する性格も見てとれる。 一方、ふたつの作品で対照的なのや近代的なオーケストレーションで程よく彩られている。副題の「ドル交響曲」は、作曲コンクールでの優勝賞金から来ているそうだ。広上は一昨年もこの曲を広島で取り上げており、お気に入りのようだ。 この爽やかな両曲に挟まれているのが、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第1番。ソロの米元響子は1997年のパガニーニ・コンクールに史上最年少で入賞したのちも、内外のコンクールで賞を手にしている。着実はサイズ。ピアノ協奏曲第2番は協奏曲としては異例の長大さを持ち、4楽章構成を持つことからしばしば「ピアノ付きの交響曲」とも形容される。ピアニストにとってはタフな協奏曲である。国際的な活躍を続ける実力者江口玲のこと、説得力のあるソロを聴かせてくれるはず。逆に交響曲第3番はに地歩を固め、現在はソリストとして活躍すると同時に、オランダの名門マーストリヒト音楽院で後進の指導に当たっている。広上ともすでに共演歴があり、こちらも爽快な風が吹き抜けそう。ブラームスの4曲の交響曲のなかではもっとも演奏時間が短い。曲を静かに余韻を残して閉じるという点も特徴的で、プログラムの前後半のコントラストも興味深い。 マエストロの華麗な棒のもと、ブラームスの傑作2曲の魅力が十全に伝えられることだろう。広上淳一 ©大窪道治米元響子 ©武藤 章江口 玲 ©堀田力丸秋山和慶
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