eぶらあぼ 2016.2月号
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41©成澤 稔クァルテット・ウィークエンド2015-2016 エルデーディ弦楽四重奏団弦楽四重奏のみに託されたベートーヴェン最晩年の高貴なるメッセージⅡ2/20(土)14:00 第一生命ホール問 トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702 http://www.triton-arts.netエルデーディ弦楽四重奏団楽聖の転換点とロマンの息吹を聴く取材・文:柴田克彦Interview 1989年東京芸大出身者によって結成後、充実した活動を続けるエルデーディ弦楽四重奏団が、いま第一生命ホールでベートーヴェンの後期四重奏曲シリーズを行っている。来る第2回は、本丸を成す第15番と、その2年後の作で関連性が強いメンデルスゾーンの第2番を組み合わせた興味深い内容。ヴァイオリンの蒲生克郷と花崎淳生(あつみ)に話を聞いた。 まずメンデルスゾーンの四重奏曲。彼らは番号付きの6曲を全て演奏している。 「彼はベートーヴェンと近い時代にその影響を受けながらも自己の作風を確立し、歴史が変わる息吹を感じさせます」(蒲生:以下、G) 「古典的な立ち位置を引き継ぎつつ新しい音楽を書いた作曲家。四重奏曲を弾くと、ヴァイオリン協奏曲だけでは分からない魅力を感じます」(花崎:以下、H) 実質的な1作目である2番は「6曲の中でも旋律美や勢いをもち」(G)、「ベートーヴェンの(15番の)影響が明快に表れた作品」(H)。 「15番や11番と似た部分が随所にありながら、展開の手法に彼の特徴が出ています。例えば第4楽章でのレチタティーヴォの使用は15番と同じ。しかしベートーヴェンは橋渡し的に用い、メンデルスゾーンは曲中に取り入れて再帰させます。またこれは当時評価の低い15番の凄さを理解していた先見の証しでもあります」(G) ベートーヴェンの15番は「彼でないと書けない曲」(G)だ。 「実際は12番の次に書かれた作品。作曲中に病気をしていたので、第3楽章に長大なリディア調の『病癒えたる者の神への感謝の歌』を置き、マーチ、レチタティーヴォを経て、終楽章に至ります。こうした場面転換が巧みな上、ソナタ楽曲の構成から外れて新たな世界に分け入る様が明確に表れています。同時に、テーマを細分化し各所に関連付けながら曲を構成する彼の特徴も顕著で、導入部のテーマから大きなものを作ってしまう。しかも旋律は魅力的で、第1・2・5楽章は確かな形式を有しています。ですから新旧の作風を相もつ最後の作品といえますね」(G) 「構成やモティーフなど『第九』の影響も大きい。それに第3楽章、特にコラールが素晴らしいですね」(H) 弦楽四重奏は「4人の小さな社会。ソロやオーケストラと違ってまわりも考えながら自分たちで曲を作り上げていく、その面白さが魅力」(G)で、「作曲家が最も言いたいことを語っている宝物の宝庫」(H)。そして今後は「本当にいいと思う曲を演奏していきたい」(H)という。「毎回新たな発見があり、ベートーヴェンに追いつかない」(G)と語るように、本シリーズはその代表例。「響きが弦楽器に最適」(G&H)なホールで、熟練の味を堪能したい。3/5(土)19:00 サントリーホール問 オーパス・ワン042-313-3213 http://www.takako-nojiri.com野尻多佳子(ピアノ) Forever 3月へのレクイエム希望と愛に満ちた世界を目指して文:長井進之介 国内外で幅広く演奏活動を展開する野尻多佳子のリサイタルは、毎回明確なテーマに基づいたタイトルを持つ。3月にサントリーホール(大ホール)で開催の今回は、野尻の「早春の希望に溢れた日がずっと続くように」との想いが込められた「Forever」。更に、3月は2011年に東日本大震災、1945年には東京大空襲という大きな出来事のあった月ということで、サブタイトルは「3月へのレクイエム」に。「この世紀が希望と夢に満ちた世界であるように」という祈りも込めた。その想いは選曲にも色濃く反映されている。聴力の喪失という音楽家にとって致命的な病におかされる前後に書かれた、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第14番「月光」と第21番「ワルトシュタイン」、20世紀アメリカの作曲家バーバーが第二次世界大戦後に書いたピアノ・ソナタ、そして16世紀ルネサンス後期の作曲家パレストリーナの「悲しみの聖母」(野尻多佳子編曲)が並ぶ。永遠不変の名曲を通し、彼女の力強いメッセージを感じたい。Photo:JUNKO TOMIYAMA

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