eぶらあぼ 2016.2月号
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242国際舞台芸術ミーティング in 横浜 2016ピチェ・クランチェン『Dancing with Death』世界初演アートの奥底にある“始原”のパワーを示す文:乗越たかお笠井 叡『冬の旅』初のセルフコレオグラフィーでシューベルトを踊る文:高橋森彦2/7(日)14:00、2/8(月)18:00 KAAT神奈川芸術劇場 ホール問 TPAM(国際舞台芸術ミーティング in 横浜) 事務局03-5724-4660 http://www.tpam.or.jp2/12(金)~2/14(日) 東京芸術劇場 シアターイースト問 ハイウッド03-3320-7217 http://www.akirakasai.com いまやダンスにおいてもアジアのアーティストは、大きく躍進している。アジア自身が様々なダンスフェスティバルを持つことで、欧米のダンスマーケットとはまた違った活気を呈しているのである。アジアの文化に根を張りながら、欧米も含め様々な文化を溶かし込んで、新しいアートが陸続と生まれている。そういう流れの中で世界的に最も注目されているダンサー・振付家の一人、タイのピチェ・クランチェンが、アジアで最も歴史ある舞台芸術専門の国際的なプラットフォーム、国際舞台芸術ミーティング in 横浜(TPAM)に登場する。 『Dancing with Death』は、タイ北東部のルーイ県で開催されているピーターコーン・フェスティバルからのインスピレーションを具現化したものだという。精霊を模した鮮烈な色使いの被り物&衣裳を身にまとい、住人が一体となって歌い踊る。人と精霊が混ざり フランツ・シューベルトが死の前年に発表した連作歌曲集『冬の旅』全24曲を、たった1人で踊る! 挑むのは舞踏家・振付家の笠井叡。1960年代初頭にデビューし、世界的舞踏家・大野一雄や暗黒舞踏の創始者・土方巽に学んだ後、独自の舞踊宇宙を追求してきた。「舞踏のニジンスキー」と称され一世を風靡するも人智学の研究のため渡独し、帰国後も長らく舞踊公演を行わなかったため伝説的存在であったが、21世紀に入ってからは毎年のように話題作を世に問う。バレエ界の異才ファルフ・ルジマトフや作曲家・ピアニストの高橋悠治との協働作業も反響を呼んだ。 笠井のダンスの特徴として、ソロであっても群舞作品であっても、自身の踊りを即興で通すことが挙げられる。古希を過ぎているが、大胆で奔放な踊りに接する限り、肉体も精神も若々しい。しかし、今回の『冬の旅』は初のセルフコレオグラフィー、すなわち自身に振付を行うという新たな挑戦だ。「即あう、本来の祭りの姿だ。 クランチェンはトレイラー映像の中で「体系だった理論や訓練もないのに、こんなに素晴らしいアートの数々が生まれてくるのはなぜか」と語る。じつはそれこそがアートを生み出す神秘であり、アートが人間に不可欠なものである由縁だ。アートの奥底にある始原のパワーを、本作で見せてくれるだろう。 クランチェンは映像の中で、こうも言っている。 「タイトルは『美、人生、死と踊る』となるだろう」 今回のタイトルは「死」だけだ。美と人生はこれから作られて三部作となるのか、今作でその二つを内包した「死」を描くのか。世界初演を、心して待ちたい。興を裏返しにしたような振付作品であれば、と願っている」と抱負を語る。 即興を裏返しに!?無論、単に即興で創った動きを固め連ねて踊るだけではあるまい。笠井は他の踊り手に振り付けた際に、踊り手の個性を鮮やかに引き出すし、音楽性も豊かである。その鮮やかなマジックが自身と向き合った時に、どう作用するのだろうか。深遠で甘美、哀切極まりない音楽に身を委ねつつ、新たな伝説の誕生をしかと見届けたい。『Dancing with Death』 Photo:Nattapol Meechart『日本国憲法を踊る』より 写真:伊藤 孝

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