eぶらあぼ 2016.2月号
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241東京バレエ団『白鳥の湖』ドラマ性重視の“ブルメイステル版”で告げる新時代の幕明け文:守山実花2/5(金)~2/7(日) 東京文化会館問 NBSチケットセンター03-3791-8888 http://www.thetokyoballet.com3/12(土)、3/13(日)各日14:00 新国立劇場(中)問 新国立劇場ボックスオフィス03-5352-9999 http://www.nntt.jac.go.jp/dance 多種多様な演出で上演されている古典バレエ。どの版を選ぶかに、そのカンパニーが重んじるスタイルやあり方が反映される。東京バレエ団は、ブルメイステル版『白鳥の湖』を2月に初演。新芸術監督・斎藤友佳理体制の本格的なスタートとして、おおいに注目される。 1953年初演のブルメイステル版は、物語的な首尾一貫性が特徴。宮廷の舞踏会に登場する各国の民族舞踊が、悪魔の手下とされ、王子や宮廷の人々を惑わす役目を負う。ディヴェルティスマンであるだけでなく、物語の進行上不可欠な存在として設定することで、ドラマ性を高めているのだ。また音楽はチャイコフスキーのオリジナルに立ち返り、割愛されてきた音楽を復活させている点も重要。音楽家の意図に添ってドラマを構築していく試みである。特筆すべきはオディールの登場以 バレエが観客にもたらす感動はさまざま。何度観ても古びない古典もいいし、未知の感動に出会うワクワク感もたまらない。新国立劇場バレエ団のダンサーたちが、鮮度の高い作品に全力でチャレンジする本シリーズは、さしずめ後者の代表だろう。 第一の見どころは、バレエ団のダンサーが振り付けた作品を本人や仲間たちが踊る「NBJ Choreographic Group」の作品群。バレエ団の中から振付家を育てることを目標に2012年からスタートした企画で、確実なテクニックを持ったダンサーたちが踊る“できたてほやほや”の作品は、それぞれに作者の個性が息づき、見応えは十分だ。これまでにもネオ・クラシック風の群舞や繊細なソロ、斬新なコンテンポラリーなど多彩な作品が舞台を飾っているが、「あの人がこの振付を?」という驚きや発見も随所にあり、舞台で見慣れたダンサーたちの新たな魅力に触れられること必至。今回は米沢唯や髙橋一輝ら、7人のダンサーの振付が登場する。降の畳みかけるような展開、音楽とダンスが怒涛のように押し寄せ、王子と私たちを幻惑してしまう。 ドラマ性を重んじながらも、過度の演劇性に傾いたり、精神分析的な解釈を行うわけではなく、あくまで古典バレエのスタイルを守った演出であるブルメイステル版の導入は、斎藤が芸術監督としてカンパニーを導いていく方向を示唆しているのではないだろうか。 キャストは3組。トップペアの上野水香と柄本弾、抒情的な表現に優れる渡辺理恵と、ロシア・スタイルを基盤にし もうひとつの見どころは、世界的に注目を集める振付家ジェシカ・ラングが、新国立劇場バレエ団のために創作した作品『暗やみから解き放たれて』の再演。ラング自身の手による現代た実力派の秋元康臣、若手のホープ、川島麻実子と岸本秀雄。 新時代の幕明けだ。左より:渡辺理恵/上野水香/川島麻実子『暗やみから解き放たれて』より Photo by Takashi Shikama新国立劇場バレエ団『DANCE to the Future 2016』ダンサーたちが創り出す瑞々しい感性文:新藤弘子アート風の装置や、ダンサーたちの洗練された美しい動きは、14年3月の初演時にも評判を呼んだ。日々真剣にダンスに向き合う彼らが、2年の時をかけて磨き上げた表現に期待が高まる。

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