eぶらあぼ 2016.1月号
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69キュウ・ウォン・ハン ロマンティック・バリトン・リサイタル魅惑のヴェルヴェット・ヴォイス文:宮本 明第3回 HAKUJU 東日本大震災チャリティコンサートトップ・プレイヤーたちによるクラシック・エイド文:宮本 明2016.2/5(金)19:00 浜離宮朝日ホール問 クリスタル・アーツ03-6434-7997 http://www.crystalarts.jp2016.3/11(金)15:00 Hakuju Hall問 Hakuju Hallチケットセンター03-5478-8700 http://www.hakujuhall.jp 韓国・ソウル出身の「ロマンティック・バリトン」キュウ・ウォン・ハンの、東京では5年ぶりとなるリサイタルが開かれる。ニューヨークのマンハッタン音楽院で学び、1999年にサンフランシスコ・オペラの《ドン・ジョヴァンニ》(マゼット役)でデビュー。その後も同劇場やヨーロッパの劇場でキャリアを重ねてきた。母国では韓国国営放送の大河ドラマ「大王世宗」の主題歌を歌うなど国民的人気歌手のひとり。日本でも「サントリー 1万人の第九」など佐渡裕との共演を中心に活躍。2008年にエイベックス・クラシックスからデビューCD『この愛を~イタリアを歌う』をリリースしている。 韓国人歌手らしい力強いエネルギッシュな歌声はもちろん、やわらかなフレーズを歌うソフトなテクニックも併せ持つ。そのストレスのないなめらかな 釜石市から北へ10キロほどの位置にある岩手県大槌町は、東日本大震災の津波被害で町の大半を消失した。その地域に、被災した子どもたちの心のケアを目的に2013年にオープンした「子ども夢ハウスおおつち」は、山口県の社会福祉法人「夢のみずうみ村」が開設し、ボランティアと寄付金で運営されている施設。学校帰りの遊び場であり、肉親や友人を奪われた子どもにとっては、信頼できるスタッフのいる相談所でもある。高齢者のための小規模デイケア「夢のみずうみ村おおつち」も併設されている。 この施設を支援するための『HAKUJU 東日本大震災チャリティコンサート』は今回で3回目の開催。大萩康司(ギター)、川本嘉子(ヴィオラ)、小林美恵(ヴァイオリン)、長谷川陽子(チェロ)、林美智子(メゾソプラノ)、三舩優子(ピアノ)、ブルーオーロラ サクソフォン・カルテット(平野公崇、田中拓也、大石将紀、西本淳)と、クラシック界の最前線で活躍する演奏家たちが出演して行なわれる。 開演は15時。その十数分前の14時46分に震災が発生した3月11日から5年声はまさにヴェルヴェット・ヴォイス。惚れ惚れするような美しさだ。 予定曲目は、《椿姫》より〈プロヴァンスの陸と海〉、《カルメン》より〈闘牛士の歌〉、シューマン「献呈」、ベートーヴェン「御身を愛す」、新井満「千の風になって」、いずみたく「見上げてごらん夜の星を」など。ドイツ歌曲からオペラ・アリア、そしてミュージカル・ナンバーから日本のスタンダード・ポップスまで、歌い手としてのキャパシティをたっぷり聴かせてくれそうだ。フランスを拠点にヨーロッパで活躍するソプラノ、齊藤純子が共演。ピアノは榎本潤。目となるこの日。「節目」を迎えることが、深刻な被害の記憶の風化や支援活動の鈍化につながることがあっては絶対にならない。私たち音楽ファンにとって、こうした音楽を通じての支援は、その決意を示す最適な場だ。会場には募金箱も設置され、寄せられた募金はコンサートの収益とともに上記施設に寄付される。©Yuji Hori大萩康司 ©松村秀雄小林美恵 ©武藤 章林 美智子 ©toru hiraiwa川本嘉子長谷川陽子 ©千葉広子三舩優子 ©武藤 章ブルーオーロラ サクソフォン・カルテット ©ノザワヒロミチ(CAPSULEOFFICE)
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