eぶらあぼ 2016.1月号
65/215
62コンスタンチン・リフシッツ(ピアノ) プレイズ・ラフマニノフロシアの巨人の精髄を真の天才が奏でる文:柴田克彦2016.2/23(火)19:00 紀尾井ホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040http://www.japanarts.co.jp他公演2016.2/21(日)所沢ミューズ アークホール(04-2998-7777) ここに、コンスタンチン・リフシッツが弾くラフマニノフの「13の前奏曲 op.32」のCDがある。19歳目前の若き日の録音だが、繊細で詩的情緒にあふれ、風格さえ漂っている。それから20年、2016年2月に彼は、この作曲家の「24の前奏曲」全曲を披露する。幾多の経験を経た今聴かせるロシア・ピアノ音楽の精髄への期待が、限りなく高いのは言うまでもない。 1976年ウクライナに生まれ、モスクワで学んだ彼は、“天才”と呼ばれ、13歳で正式デビュー後、コンクールを経ずに、真の実力派ピアニストとしての地位を確立した。近年は樫本大進との共演でもおなじみだ。彼は、コントロールの効いたダイナミクスで、詩情とロマン豊かな音楽を聴かせる。知性と強靭な意志も併せ持ち、その風情はどこか“孤高の旅人”を思わせる。このところ力を注いでいるのはバッハの作品。日本でも再三演奏し、2014年2月には「平均律クラヴィーア曲集」第1巻・第2巻全曲を披露した。 そこで今回、バッハの「平均律」に根ざしたラフマニノフの「24の前奏曲」を弾くのは、ごく自然な流れだ。これは、有名な「前奏曲 op.3-2『鐘』」、「10の前奏曲 op.23」、「13の前奏曲 op.32」を合わせて24の調性を網羅したもの。他の同系作と違って1つの曲集ではない(ゆえに一夜で聴く機会は少ない)が、その分各曲の構成が大きく、要する技巧も曲想も幅広い。それをロシア・ピアニズムを体得し、熟成を加えたリフシッツが奏でるのだから、必聴なのは自明の理。じっくりと耳を傾ければ、きっと我々にとってかけがえのない旅になる。©Sona Andreasyan小泉和裕(指揮) 東京都交響楽団熟成のサウンドで届ける節目のコンサート文:飯尾洋一第800回 定期演奏会 Aシリーズ2016.1/12(火)19:00 東京文化会館問 都響ガイド03-3822-0727 http://www.tmso.or.jp 2015年の欧州ツアーを成功裏に終えた東京都交響楽団。この1月には第800回定期演奏会を迎え、終身名誉指揮者小泉和裕が節目の回を飾る。プログラムにはメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲とリヒャルト・シュトラウスの「家庭交響曲」の2曲が並んだ。 メンデルスゾーンでソロを務めるのはイザベル・ファウスト。ベルリン・フィルをはじめ世界中のトップレベルのオーケストラと共演する今もっとも多忙なヴァイオリニストのひとりである。イザベル・ファウストの特徴は、バロックから現代音楽まできわめて幅広いレパートリーを持ちながら、作品の時代様式を考慮した解釈を施したうえで、強靭な意志とリリシズムを感じさせる独自の音楽を生み出しているところだろう。古楽器アンサンブルとの共演も多い。メンデルスゾーンではどんな音楽を聴かせてくれるだろうか。 シュトラウスの「家庭交響曲」はなんといっても壮麗で色彩豊かなオーケストレーションが聴きもの。サクソフォン4本を含めた厚みのある4管編成のオーケストラを駆使して、シュトラウス一家の家庭の情景を描くという、実にシュトラウスらしい機知に富んだ趣向になっている。高い機能性を誇る都響ならではの精緻な演奏を期待したい。また、この曲は小泉和裕と都響がこれまでにたびたび演奏してきた得意のレパートリーでもある。05年の第600回定期でも演奏されている。それから10年を経た同コンビの熟成ぶりはいかに。イザベル・ファウスト ©Detlev Schneider小泉和裕 ©堀田力丸
元のページ