eぶらあぼ 2016.1月号
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54井上道義(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団復活を祝うロシアの躍動とオーストリアの至福文:柴田克彦大植英次(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団ニューイヤー・コンサート2016大植&日本フィル、初共演でスゴいことが起こる!?文:江藤光紀第872回 サントリー定期シリーズ2016.1/15(金)19:00 サントリーホール第873回 オーチャード定期演奏会2016.1/17(日)15:00 Bunkamuraオーチャードホール第98回 東京オペラシティ定期シリーズ2016.1/21(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522 http://www.tpo.or.jp第369回 名曲コンサート2016.1/10(日)14:30 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 http://www.japanphil.or.jp 遂にこの日が来るとは…。2014年4月から病気で休養し、同年10月に復活を果たした井上道義が、東京フィルの1月定期に登場。14年7月に叶わなかった幻のプログラムが実現する。これには、代役に立った盟友・尾高忠明が、あえて異なる演目を指揮し、本来のプロは「井上が復活した際に演奏するよう」励ましのメッセージと共に温存した経緯がある。今回両者の想いが現実となるのだから、かくも喜ばしいことはない。 そのプログラムが、サントリー定期(1/15)&オーチャード定期(1/17)で演奏される、ハチャトゥリアンの「ガイーヌ」第1組曲とショスタコーヴィチの交響曲第7番「レニングラード」。土臭い旋律とリズムが魅力の「ガイーヌ」は、躍動感に充ちた井上のタクトに相応しい作品だし、交響曲全曲演奏を成し遂げたショスタコーヴィチは、彼の最大の十八番。中でも、戦争への怒りなど多 2016年。年明け早々から日本フィルの指揮台に大植旋風が巻き起こりそうだ。 同団と大植英次は今回が初共演。意外と言えば意外である。大植は団員の心を瞬時につかむ術を知っているだけでなく、オーケストラが置かれた環境から変えていく力を持っている指揮者。シェフとして在任した町の地元の人々のウケがいいのは、音楽性に加えて人柄に魅力があるからだろう。翻って日本フィルだが、「市民とともに歩む」をモットーに、アウトリーチ活動の草分けとして存在感を放ってきた。鑑賞を通じた音楽教育や地域への密着は、その運営理念の柱である。相性は見るからに良さそうである。 もちろんそれは音楽面にも言えそうだ。ずっしりとした重厚感からダイナミックなパッションのほとばしりまで、劇的な表現を得意とする大植と、ひとたび火が付くと一気に紅潮する日フィル魂。いかにもぴったりではないか。様な思いが交錯する壮大な第7番は、井上いわく「最初にこの作曲家の真の魅力を知った曲」だけに、全力投球の熱演間違いなしだ。 また東京オペラシティ定期(1/21)では、モーツァルトの交響曲第33番とマーラーの交響曲第4番を披露。前者は明朗な佳品で、喜々としたフィナーレは井上の独壇場となる。マーラーも彼が交響曲全曲演奏を行った十八番作曲家。天上的で幸福感に充ちた第4番では、チャーミングに弾む演奏が耳目に浮かぶ。また井上との共演も多い人気ソプラノ歌手・森麻季が「天上の喜び」、ひいては「再共演の喜び」を そんなわけで何だか面白くなりそうな組み合わせなのだが、曲目面も一ひねりきいている。まずは日本フィルの看板奏者、コンサートマスターの木野雅之のソロでヴィヴァルディ「四季」。新春を寿ぐという意図だろうが、ここで大植がチェンバロの腕前を披露。自ら奏者の一人としてオーケストラに参加することで、ソロとオーケストラと指揮が入り乱れ、しかるのちに融合し、一体化するというシナリオか。 後半はドヴォルザークの「新世界交響曲」だが、これほどまでに深く日本人歌うのも見逃せない。 井上の東京フィル復帰に相応しい両プロは、我々にも「生きる喜び」を与えてくれるに違いない。の心に浸透する歌心にあふれた曲は他にないのではなかろうか。メロディの力で私たちを揺さぶる大植独特のイマジネーションが、日本フィルという翼を得て飛翔する。森 麻季 ©Yuji Hori井上道義木野雅之 ©明石一矢大植英次 ©飯島 隆

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