eぶらあぼ 2016.1月号
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48ミヒャエル・ボーダー(指揮) 読売日本交響楽団世紀転換期の爛熟の美に浸る稀少な体験文:柴田克彦第554回 定期演奏会2016.1/14(木)19:00 サントリーホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 http://yomikyo.or.jp 読響の1月定期は極めて興味深い。指揮はミヒャエル・ボーダー。ウィーン国立歌劇場やベルリン・フィル等で活躍しているこのドイツの名匠は、精巧な音楽作りと熱いタクトで絶賛を博し、中でも後期ロマン派や近現代作品に定評がある。日本でも複数の楽団や新国立劇場で敏腕を発揮しているが、今回読響と初の共演を果たす。 演目では、まずツェムリンスキーの交響詩「人魚姫」が目を引く。マーラーとシェーンベルクに挟まれた不遇の天才による同曲は、1905年の初演後行方不明だった楽譜が、80年代に発見されて急浮上した話題作。人を愛した人魚の悲哀を描くアンデルセンの童話に基づいた、R.シュトラウス並みの大編成による大作で、甘美な旋律と抒情味あふれる音楽は、聴けば必ずや魅了される。この音物語を近代ものやオペラに長けたボーダーの指揮と、最近ゴージャスな輝きを増す読響サウンドで味わえるとなれば、逃すことはできない。 R.シュトラウスの「ドン・ファン」=同時代に名声を得た作曲家の華麗な交響詩との対照も妙味十分。またリストのピアノ協奏曲第2番も、緻密で抒情的な美品にもかかわらず、1番に比べると演奏される機会は少ないので、ぜひ耳にしたい。しかも交響詩の「人魚姫」は3楽章の交響曲型で、リストの協奏曲は6部ひと続きの交響詩的な構成。この対比も示唆に富んでいる。ソロは近年急速に評価を上げる83年スイス生まれの俊英フランチェスコ・ピエモンテージ。クリアなタッチと緻密な表現力で魅せる彼が、曲の真価を清新に明示してくれることへの期待も大きい。 これはあらゆる意味で注目の公演だ。フランチェスコ・ピエモンテージ ©Julien Mignotミヒャエル・ボーダー ©Alexander Vasiljev飯森範親(指揮) 日本センチュリー交響楽団協奏?それとも競争?!文:笹田和人第206回 定期演奏会2016.1/15(金)19:00、1/16(土)15:00 ザ・シンフォニーホール問 センチュリー・チケットサービス06-6868-0591 http://www.century-orchestra.jp ステージの主役は、ソリストか? それとも、オーケストラなのか? 知的で繊細、かつ熱い血の通ったプレイで聴衆を魅了、世界中から常に視線を注がれているヴァイオリンのイザベル・ファウストが、首席指揮者の飯森範親が率いる日本センチュリー交響楽団の定期へ登場。ブラームスのヴァイオリン協奏曲とバルトークの“オケコン”で、主役の座を巡り“協奏曲”で“競争”する。 モダンと古楽、両方のフィールドを自在に往き来し、様々な時代のレパートリーを網羅。変幻自在なスタイルで聴く者を虜にし、クラウディオ・アバドら巨匠の厚い信頼を得てきたファウスト。飯森は「特にドイツの作品に関しては、自分の“言葉”としてヴァイオリンを奏でてくれる、素晴らしい演奏家。演奏を通じて、『ブラームスが考えていたこと』を、私たちに届けてくれるのでは」と期待感を口にする。 さらに、後半では、バルトークの難曲「管弦楽のための協奏曲」に挑む。「この曲の変拍子は、すなわち“歌”。ハンガリーの言葉の語法と一致させながら、音楽的に表現するのが難しい。さらに、楽器同士が、対話してゆく作品でもある。私たちが、これをどう料理するのか、楽しみにしていただきたい。絶対に損はさせません」と力を込める。また、これらに先立ち、飯森が「僕にとっては、もう“十八番”かな」と言うJ.シュトラウスⅡのポルカ「狩り」(1/15)と「トリッチ・トラッチ・ポルカ」(1/16)が、日替わりで披露される。イザベル・ファウスト ©Detlev Schneider飯森範親 ©Ryo Kawasaki

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