eぶらあぼ 2016.1月号
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42『ロイヤル・コンセルトヘボウ オーケストラがやって来る』監督:エディ・ホニグマン 出演:ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団2016年全国順次公開東京:渋谷・ユーロスペース 1/30(土)より大阪:シネ・リーブル梅田 2月愛知:名古屋シネマテーク 2月下旬 他詳細は右記の映画公式サイトでご確認ください。 http://rco-movie.com 世界のトップ・オーケストラの一つ、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(RCO)は、創立125周年記念のワールドツアーを2013〜14年にかけて行った。1年で50公演を行うツアーは、初訪問となる南アフリカや、39年ぶりとなるロシア公演など、RCOにとっても歴史的な一大イベントになった。そのツアーを記録したドキュメンタリー映画『ロイヤル・コンセルトヘボウ オーケストラがやって来る』がこの1月に公開される。監督は『アンダーグラウンド・オーケストラ』などで知られる社会派、エディ・ホニグマン。 2015年11月にRCOがツアーで日本を訪れた際、ともに重要な“役”で映画に出演している、打楽器奏者のヘルマン・リーケンと首席コントラバス奏者のドミニク・セルディスに話をきいた。 (リーケン 以下:R)「長大なツアーだったので、いくつかのセクションに分けて実施しました。最後のセクションは1ヵ月かけてロシア・中国・日本・オーストラリアを連続して訪れましたが、僕らのコンディションはいつも良かったですし、いい演奏ができたと思います」 (セルディス 以下:S)「ツアー終了後の達成感が凄かった。120人の大所帯が世界中を移動するには、想像を絶する労力が必要です。僕の大きな楽器が必要な時にその場所にちゃんとある、ということ自体凄いことなのです。ツアー・スタッフの働きには本当に頭が下がります」 映画はアルゼンチンのブエノスアイレス、南アフリカのソウェト、ロシアのサンクトペテルブルクなどでの公演の様子に、本拠地アムステルダムの模様が挿入される。もちろん、首席指揮者のマリス・ヤンソンスや、ヴァイオリニストのジャニーヌ・ヤンセンらが登場するリハーサルや本番の映像もふんだんに使われている。 R「映画を最初に観た時は、本当にびっくりしました。なぜなら、誰もいないコンセルトヘボウのステージだ、と思ったら、僕だけが映っている。そして、何か長いこ人生と音楽の交差を見つめるドキュメントとしゃべっていて…。恥ずかしくて仕方がなかったです。でもそのシーンが終われば、あとは楽しむことができました。“単なるオーケストラのツアー映画”ではないか、という不安は吹っ飛びました」 S「そう、様々なオーケストラのドキュメンタリーを観ましたが、これは最高傑作の一つだと思います。音楽が軸になってはいますが、音楽が人々にどのような影響を与えているのか、その要素をうまくまとめています。そして映像もとても美しい」 ブエノスアイレスではタクシーの運転手、ソウェトではRCOの教育プロジェクトに参加した少女、サンクトペテルブルクでは、スターリンとヒトラーによって人生を翻弄された老人…。ブルックナー「交響曲第7番」、チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」、ヴェルディ「レクイエム」、マーラー「交響曲第2番『復活』」といった名曲が彼らの人生と交差する。 セルディスは映画の中で流れるショスタコーヴィチ「交響曲第10番」について独自の解釈を説明しながら音楽の“強さ”を訴えている。 S「政治家は、音楽が特に人々の感情に訴えかける芸術であることをいいことに、音楽を利用したり抑制したりしてきました。しかし、今でも250年以上前のバッハの音楽が演奏されているように、音楽はいつも政治に“勝利”しています。音楽は我々が想像できないほど、大きなものなのです」 この映画を観た後には、人生と音楽について様々な想いが巡ってくるに違いない。interview ヘルマン・リーケン(打楽器)ドミニク・セルディス(コントラバス)取材・文・写真:大塚正昭 協力:KAJIMOTO左:ドミニク・セルディス 右:ヘルマン・リーケン映画『ロイヤル・コンセルトヘボウ オーケストラがやって来る』
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