eぶらあぼ 2016.1月号
202/215

245新国立劇場バレエ団『ラ・シルフィード』『Men Y Men』2作品で体験するバレエの“伝統”と“現在”文:守山実花2016.2/6(土)~2/11(木・祝) 新国立劇場 オペラパレス問 新国立劇場ボックスオフィス03-5352-9999 http://www.nntt.jac.go.jp/ballet2016.1/30(土)18:00、1/31(日)15:00 新国立劇場(中)問 東京シティ・バレエ団03-5638-2720 http://www.tokyocityballet.org 手を伸ばそうとすればするほど、遠ざかっていく理想、憧れ―『ラ・シルフィード』は、非日常、幻想の世界への飛翔を描いた作品だ。初演は1832年。大地との接触を極限まで小さくして立つことを可能にするトウシューズを履き、透けるような薄布を重ねたロマンティック・チュチュに身を包んだ女性ダンサーは、宙を舞う儚い妖精として観客の前に出現し、人々はロマンティックな幻視に酔いしれた。非現実世界への憧憬を描き出すロマンティック・バレエの大流行はこの作品からはじまった。 新国立劇場がレパートリーとするのは、36年にデンマークで初演されたブルノンヴィル版。当時のスタイルを残す貴重な作例である。主人公の男性は空気の精シルフィードを抱きしめることができないというプロットに忠実で、パ・ド・ドゥにおいても、二人が触れ合う振付は極限まで抑えられている。向かい合い見つめあいながらステップを踏むなど、独特の上品な表現に注目を。女性 古典からコンテンポラリーに至るまで独自のレパートリーを誇る東京シティ・バレエ団が、世界バレエ界の新旧の潮流を映し出す2作品による<ダブル・ビル>を上演する。 まず注目は、本邦初演となるイリ・ブベニチェクの新作『L’Heure Bleue(ルール・ブルー)』。ハンブルク・バレエ団のソリストとして活躍した双子の兄弟イリ&オットー・ブベニチェクの名前をご存知の方は少なくないだろう。本作は、2013年にアメリカで初演されたもので、今回東京シティ・バレエ団のためのスペシャル・バージョンがお目見えする。イリが演出・振付を手がけ、オットーが振付助手から舞台美術、照明、衣裳を担当するなど、まさに兄弟の才気が結集された意欲作。音楽はJ.S.バッハとボッケリーニの弦楽作品、衣裳は中世ヨーロッパ風で、コケティッシュでユーモア溢れた舞台が楽しめそうだ。 もう一作は、夭折したドイツの鬼才ダンサーのしっとりとした物憂げな上体の表情や、男性ダンサーの素早い足さばき、弾むような跳躍も見どころだ。 並演される『Men Y Men』(日本初演)は、昨年『眠れる森の美女』の振付を担当したウエイン・イーグリングによる2009年の作品。「典型的な男性らしさのみなウヴェ・ショルツが1991年に発表した『ベートーヴェン 交響曲第7番』。大作曲家の名曲を視覚化した壮大なシンフォニック・バレエとして名高い。同団が2013年に日本初演し、翌年「NHK バレエの饗宴 2014」で再演された。志賀育恵、佐合萌香、中森理恵、黄凱、キム・セジョン以下バレエ団総出演、大好評を受けてのアンコール上演だけに、まだこの作品を見たことのない方にもぜひお薦めしたい。らず、男性の持つさまざまな側面を見せる振付になっています。いわゆる古典作品とはまた一味もふた味も違う、現代のバレエ作品です」(イーグリング) 二作品を同時に観ることで、バレエの伝統と現在を体験できるのではないだろうか。『Men Y Men』 Photo by Richard Haughton『ラ・シルフィード』 撮影:瀬戸秀美『ベートーヴェン 交響曲第7番』(2013年) Photo:Yoko Takatani『L’Heure Bleue』(2013年) Photo:Yoko Takatani東京シティ・バレエ団『ダブル・ビル』才気が結集された話題の新作と大作のアンコール上演文:渡辺真弓

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です