eぶらあぼ 2016.1月号
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172CDCDCDCDバーンズ!バーンズ!!バーンズ!!!/バーンズ&シエナシンディング ピアノ作品集 Vol.1/広瀬美紀子優雅なるモーツァルト/久元祐子十七絃箏の世界/菊地悌ていこ子バーンズ:アルヴァマー序曲、アリオーソとプレスト、パガニーニの主題による幻想変奏曲、交響曲第3番ジェイムズ・バーンズ(指揮)シエナ・ウインド・オーケストラ須川展也(サクソフォン)シンディング:春のささやき、プレリュード、15のカプリスより第2番・第3番・第5番・第7番・第8番・第12番、アンダンティーノ、スケッチ帳広瀬美紀子(ピアノ)モーツァルト:ピアノ・ソナタK333・K331「トルコ行進曲付き」(それぞれフォルテピアノとモダンピアノで演奏)久元祐子(フォルテピアノ/ピアノ)牧野由多可:十七絃独奏による主題と変容「風」/湯浅譲二:箏歌、芭蕉五句/三善晃:樹を、波と……/廣瀬量平:「みだれ」による変容/平吉毅州:風の歌Ⅲ 他菊地悌子(十七絃箏)矢崎明子(箏/歌)中川昌巳(フルート)収録:2015.7/4、文京シビックホール(ライヴ)エイベックス・ミュージックAVCL-25881 ¥3000+税クァッドリーガQR-09003 ¥2315+税コジマ録音ALCD-9155 ¥2500+税カメラータ・トウキョウCMCD-25042 ¥2500+税吹奏楽界の大御所バーンズの自作自演のライヴ録音。代表作が並び、ソリスト&ゲスト・コンマスとしてサクソフォンの名手・須川展也が華を添えたファン垂涎のアルバムだ。「アルヴァマー」は、当然超快速ではなく落ち着いた演奏。歌に気品があり、細部も明瞭で心地よい。「アリオーソ〜」の須川の妙技、「パガニーニ〜」の超絶技巧は共に鮮やか。交響曲第3番は、各楽章の特質を深く抉りながら、全体を劇的かつ壮大にまとめ上げ、ショスタコーヴィチの交響曲の如き感銘をもたらす。いつも以上に重心の低いシエナのサウンドも光る、バーンズのスタンダードとして文句なしの1枚。(柴田克彦)クリスチャン・シンディングは、19世紀後半から20世紀前半にかけて、グリーグと共にノルウェーの作曲界を牽引した巨匠。当盤では、よく知られている「春のささやき」をはじめ、わが国では演奏機会に恵まれないものも含めて、ピアノ・ソロ作品に焦点を当てた。その作風は、スカンジナビアの空気感の一方、リストやワーグナーからの影響も色濃い。国際的な活動を展開する広瀬は、奇を衒うことなく、スコアに真正面から対峙。時に大らか、時に内省的な響きの世界を、余すことなく表現している。その秀演はもちろん、広瀬自身の筆になる丁寧な解説文にも、作品への深い思い入れが滲む。(笹田和人)鍵盤楽器の歴史と奏法に通じた久元祐子が、モーツァルトのピアノ・ソナタ全集第4弾をリリース。今回はモーツァルトがウィーンでの生活を始めた時期に書かれたK331「トルコ行進曲付き」およびK333という人気作品を選曲。モーツァルトが愛用したヴァルター製モデルのフォルテピアノでK333を、シュタイン製モデルでK331を、さらに両曲をベーゼンドルファー製のモダンピアノで収録。なおK331のモダンでの演奏は、2014年9月に発見された自筆譜に基づくという試みだ。優しく丁寧に、細部まで繊細な表情を伝える久元の演奏が、作品と楽器の特性を瑞々しく伝える。(飯田有抄)低音域を拡張した十七絃箏は二十世紀になって合奏用に開発されたが、1970年代半ば以降、独奏楽器としてレパートリーを広げていった。菊地悌子はその流れを導いた中心的な奏者。菊地が様々な作曲家との協業によって開拓してきた表現領域をリアルタイムで録音したアルバムが、CDで復刻された。草分け的楽曲ともいうべき牧野由多可「風」に始まり、古来のイディオムや唄いを用いた湯浅譲二「箏唄、芭蕉五句」、即興的な味わいの三善晃「樹を、波と」、伝統曲を元にした廣瀬量平「『みだれ』による変容」など、邦楽と現代音楽の境界に豊かな果実が実った時代の息吹をヴィヴィッドに伝えている。(江藤光紀)

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