eぶらあぼ 2015.12月号
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56東京佼成ウインドオーケストラ 第126回 定期演奏会 「ロシアの夢物語」12/5(土)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 東京佼成ウインドオーケストラ チケットサービス0120-692-556 http://www.tkwo.jpトーマス・ザンデルリンク(指揮)佼成ウインドでは最高レベルの成果を確信しています取材・文:柴田克彦Interview 巨匠クルトを父にもつ指揮者一家の長兄トーマス・ザンデルリンクが、この12月、2014年から首席客演指揮者を務める東京佼成ウインドオーケストラと3度目の共演を果たす。世界トップ級の楽団や歌劇場で活躍するマエストロが吹奏楽を振るのは、今のところ「佼成ウインドのみ」だという。 「ハイレベルの奏者ばかりで、みな人柄も温かい。そこに感銘を受け、例外的にポストを受諾しました。2度の共演で音楽的な質の高さは充分認識していますから、今回も実に楽しみです」 演目は、「ダッタン人の踊り」と「シェエラザード」が並ぶロシアもの。何れもマエストロが育ったサンクトペテルブルグで初演された作品だ。 「共に華やかで生き生きとした、吹奏楽に編曲しても面白さが出せる曲です。特に『シェエラザード』は、ストーリー性やドラマ性がありますから、存分に楽しんでいただけることでしょう。それに、『シェエラザード』はサンクトペテルブルグ・フィルが定期的に演奏し、『ダッタン人の踊り』を含む歌劇《イーゴリ公》も地元でよく上演されていましたので、幼い頃から耳にしている馴染み深い作品。オーケストラではもちろん何度も指揮しています」 なお、今回の「シェエラザード」は、ピッコロ、クラリネットやサックスなどに振り分けられたヴァイオリン独奏をはじめ、オーケストラ・ファンにも興味深い編曲がなされている。 「私は吹奏楽版であっても、シンフォニックなアプローチを変えることはありません。ただ弦の音を要求するのではなく、実際出てくる音色を生かしながら構築していきたい。でもこれまでの経験からみて、佼成ウインドでは音色面を心配せずに、音楽作りにのみ専念できると思います」 もうひとつ、アメリカが生んだ“吹奏楽の父”A.リードの「ロシアのクリスマス音楽」も演奏される。同曲はロシアのコラールを用いた濃密な名作。海外のオーケストラ指揮者が吹奏楽のオリジナル曲を振るのは稀ゆえに、これまた注目度が高い。 「この選曲に驚かれるかもしれませんが、リードは様々な作品を残した、まさに神様的存在であり、モスクワで作曲の審査もしている私にとって、ロシアの伝統音楽に根ざした20世紀作品は身近なジャンルでもあります」 今後は「管楽オーケストラと合唱のためのブルックナーのミサ曲第2番、ストラヴィンスキーの『管楽器のためのシンフォニーズ』や最近パート譜が発掘された『葬送の歌』、あるいはモーツァルトの『グラン・パルティータ』などを取り上げたい」と意欲満々のマエストロ。日本が誇るウインドオーケストラを世界的指揮者が振る稀少な公演に、吹奏楽愛好家もオーケストラ・ファンも、こぞって足を運びたい。オルガン クリスマス・コンサート 「聖夜の贈り物」オルガンと金管が醸す敬虔にして華麗なる響き文:笹田和人12/23(水・祝)15:00 神奈川県民ホール(小)問 チケットかながわ0570-015-415 http://www.kanagawa-arts.or.jp川越聡子 最高のクリスマス・プレゼントになるだろう。神奈川県民ホール小ホールは、40年前、日本の公共ホールとして初めてパイプオルガンを設置した。東京芸術劇場副オルガニストを務める川越聡子が弾く、この名器(ドイツのヨハネス・クライス社製)と、読売日本交響楽団首席の日橋辰朗(ホルン)をはじめ、安藤友樹(トランペット)、辻本憲一(同)、新田幹男(トロンボーン)、佐藤和彦(テューバ)という名手による金管五重奏の競演が楽しめるのが、『オルガン クリスマス・コンサート 聖夜の贈り物』だ。 まずは、オルガン・ソロによるバッハ「前奏曲とフーガハ長調」(BWV547)と、メシアン「神はわれらのうちに」で厳かに幕開け。続いて、金管五重奏の輝かしい音色を伴い、ギルマン「交響的断章」やカーナウ「ファンファーレとフローリッシュ」、リンドベルイ「ダーラナの古い牧舎の讃美歌」を披露。クリスマス・キャロルのメドレーに至っては、祝祭的な気分が一気に頂点へ。この贅沢な時間、大切な人と分かち合いたい。

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