eぶらあぼ 2015.12月号
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54東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 第九特別演奏会「第九」の直球勝負!文:オヤマダアツシ小林研一郎(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団ロシアの両A面プロによる新春のホットな祭典!文:柴田克彦12/28(月)19:30 東京文化会館問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 http://www.cityphil.jp第677回 東京定期演奏会2016.1/22(金)19:00、1/23(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 http://www.japanphil.or.jp 暮れも押し迫った、という表現がぴったりの12月28日。首都圏のプロ・オーケストラによる「第九」コンサートの中でも堂々の真打ち級と言える時期に、しかも1曲勝負で行われるのが東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の「第九特別演奏会」だ。 今年の指揮台に立つのは昨年に続き、桂冠名誉指揮者の飯守泰次郎。言うまでもなくドイツ音楽を知り尽くした名匠であり、ベートーヴェンの交響曲を得意としていて…などと、あらためて書く必要もないほどのマエストロである。しかも今年はオペラ部門の芸 「シェエラザード」と「春の祭典」の生演奏を、1公演で聴かれたことがおありだろうか? いずれもが通常コンサートのメインを成す2曲、しかもテイストが異なるだけに、このカップリングは滅多にない。それが日本フィルの1月定期で実現する。指揮は小林研一郎。すべてに濃厚&濃密さが漲っている。 両曲の組み合わせは意味深い。まずはそれぞれが19世紀と20世紀を代表するロシアの管弦楽曲である。かたやメロディアスでゴージャス、かたやリズムを前面に打ち出した原始的でダイナミックな作品。その対照的な持ち味は、並べて聴くとより興味深い。しかしながらリムスキー=コルサコフとストラヴィンスキーは師弟関係にある。それゆえ華麗なオーケストレーションと民族的な性格は共通している。今回はこの点を体感できるのも妙味だ。 そして今、コバケンの指揮で両曲を聴く機会はきわめて貴重。日本フィル術監督を務める新国立劇場において、1月にはワーグナーの《さまよえるオランダ人》を、10月には《ラインの黄金》を大成功させたという輝かしい実績を積み上げての「第九」である。重厚なゲルマン魂が注入された演奏が聴けるのは間違いないだろう。 もうひとつ特記したいのはマエストロが1940年生まれであり、今年は生誕75年という節目を迎えた年であるということ。この祝祭的な「第九」に華を添えるの資料によると「創立50周年の2006年ヨーロッパ・ツアーで取り上げて以来、10年ぶりとなるコバケン先生の『春の祭典』」だという。さらに同曲は「実は若き日から取り上げてきた隠れた十八番」である。となれば、久々の指揮に燃えたコバケンによる、バーバリズム全開の爆発的ハルサイが展開されることは間違いない。いっぽう「シェエラザード」は、うねるような旋律線とハイカロリーのサウンドが特徴。こちらも当然、物語を生々しく表現した絢爛豪華な音絵巻が繰り広げられる。声楽陣も、プリマドンナとして国内外で活躍中の横山恵子(ソプラノ)や、オペラをはじめマーラーの交響曲などでも存在感のある歌を聴かせてくれる池田香織(メゾソプラノ)に、望月哲也(テノール)と小森輝彦(バリトン)が加わった豪華布陣。さらにはマエストロの意図を熟知している東京シティ・フィル・コーアも加わり、一体感のある響きが東京文化会館の大ホールを揺るがすに違いない。「ザ・第九」をお聴き逃しなく。 ラザレフに培われた日本フィルならではのロシア・サウンドと、日本随一の雄弁な語り部がコラボする新春の2大名曲。誰もが体の芯から温まること必至だ。小林研一郎 ©浦野俊之横山恵子池田香織望月哲也 ©Kohei Take小森輝彦飯守泰次郎 ©武藤 章
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