eぶらあぼ 2015.12月号
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49ダニエル・ハーディング(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団ブリテン「戦争レクイエム」強力なキャストで挑む記念碑的な大作文:江藤光紀東京フィルハーモニー交響楽団 「第九」特別演奏会伝統を打ち破る、若き天才の「第九」文:飯尾洋一#551定期演奏会 2016.1/15(金)19:15、1/16(土)14:00 すみだトリフォニーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 http://www.njp.or.jp12/18(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール12/19(土)14:00 サントリーホール12/20(日)15:00 Bunkamuraオーチャードホール問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522 http://www.tpo.or.jp すみだトリフォニーを本拠とする新日本フィルが、2016年の年明け早々にダニエル・ハーディングの指揮でブリテン「戦争レクイエム」を鳴り響かせる。この曲はドイツの空爆によって破壊されたイギリスの教会の再建を祝って作曲されたが、このあたりの事情は私たちにとっても決して他人事ではない。今から約70年前、大空襲が東京を襲い、墨田の一帯も焼野原となった。現在からは想像もつかないが、この地で多くの人々が亡くなったのは事実なのだ。 「戦争レクイエム」は通常のミサ典礼文に、詩人ウィルフレッド・オーウェンの作品を接合して作られた全6楽章、80分以上を要する大作である。通常の管弦楽とは独立する形で室内管弦楽団が設置され、さらに独唱、合唱、児童合唱が加わる。オペラも得意としたブリテンの描写力は歌詞の内容を的確、かつドラマティックになぞっており、苛烈な戦いや不安、慰めなど戦争の悲哀が 暮れになると無性に聴きたくなるのがベートーヴェンの「第九」。12月も半ばを過ぎると、どのオーケストラもこぞって「第九」を演奏する。 そんな「第九」ラッシュのなかで、今年大きな話題を呼びそうなのが、イタリアの新星アンドレア・バッティストーニと東京フィルのコンビだ。1987年生まれの若手ながら八面六臂の活躍をくりひろげるバッティストーニは、首席客演指揮者を務める東京フィルとともに、これまでにもたびたび名演を生み出してきた。記念碑的な大作である「第九」となれば、その期待感もいっそう高まろうというもの。 実はバッティストーニにとって「第九」はベートーヴェンの9つの交響曲のなかで唯一、これまでに指揮した経験のない曲だという。日本と異なり、ヨーロッパには年末に「第九」を集中的に演奏する習慣はないので、これは決して驚くことではない。それにしても若き天才指揮者の「第九」デビューを東京で聴余すところなく汲み上げられている。 この記念碑的な上演に結集するキャストも強力だ。誰もが知る名テナー、イアン・ボストリッジは、これまでにもブリテン作品を精力的に世に紹介している。バリトンを歌うノルウェー出身のアウドゥン・イヴェルセンはチューリッヒ・オペラでのデビューを控えるなど、知名くというのは、ワクワクするような体験ではないだろうか。 バッティストーニによれば、「第九」とは「完全に常軌を逸している」曲であり、ベートーヴェンの魅力とは「跳躍やスピー度を上げている実力派だ。ソプラノのアルビナ・シャギムラトヴァは先日の英国ロイヤル・オペラ来日時に《ドン・ジョヴァンニ》で印象的なドンナ・アンナを聴かせた。合唱はおなじみの栗友会、それに東京少年少女合唱隊が参加。巨大な演奏陣をコントロールするハーディングの棒さばきにも注目したい。ド感、刺激的な響きにある」という。どうやら、これまでに私たちが慣れ親しんだ「第九」とは一味違った演奏が誕生しそうだ。語り草となるような、強烈なインパクトを持った「第九」を期待したい。アウドゥン・イヴェルセンイアン・ボストリッジ©Ben Ealovegaダニエル・ハーディング©Julian Hargreavesアルビナ・シャギムラトヴァアンドレア・バッティストーニ ©上野隆文

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