eぶらあぼ 2015.12月号
48/225

45ショパン国際ピアノ・コンクール2015 入賞者ガラ・コンサート熱気も冷めやらぬうちに、ライジング・スター6名が早くも登場!文:高坂はる香第87回 N響 オーチャード定期 アロンドラ・デ・ラ・パーラ(指揮) NHK交響楽団色彩感やリズム感が存分に生きるモダンな選曲文:江藤光紀2016.1/28(木)、1/29(金)各日19:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp※全国公演の情報は上記ウェブサイトでご確認ください。2016.1/31(日)15:30 Bunkamuraオーチャードホール問 Bunkamuraチケットセンター03-3477-9999 http://www.bunkamura.co.jp 2015年10月に開催された、第17回ショパン国際ピアノ・コンクール。世界最高峰の登竜門の歴史に入賞者として新たに名を刻んだ6名が、揃って来日する。2日にわたり、ソロに加え、異なるソリストによる協奏曲の演奏を予定。共演はコンクールの本選と同じヤツェク・カスプシック指揮ワルシャワ・フィル。華やかな祭典となりそうだ。 今回優勝したのは、日本のピアノファンの間では6年前の浜松コンクール優勝以来おなじみのチョ・ソンジン(韓国/21歳)。パリ留学を経て花開いた音楽が評価され、頂点に輝いた。清く美しく、確かな主張を持つ、完成度の高いショパ アメリカ、メキシコの両国で育ったアロンドラ・デ・ラ・パーラ。才色兼備の美人指揮者としてもじわじわと人気が出てきているようだ。主要レパートリーであるアメリカ両大陸の音楽の演奏は躍動感にあふれ、CDもヒット。筆者は2012年来日時に東京フィルに客演したのを聴いたが、ピアソラ独特のタンゴのリズムに乗せて長身を振り、リラックスしたノリのいい音楽を作っていた。オーケストラから豊かな色彩感も引き出して、会場も大いに沸いた。 その後のデ・ラ・パーラ、出産などで間隔が少しあいたが、来年1月にはN響を振りに再来日する。彼女の得意とする色彩感やリズム感が存分に生きるモダンな選曲となっているのも嬉しい。ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」では、しっとりと幻想的なフレンチの桃源郷が描き出され、その幻想はストラヴィンスキーの「春の祭典」で恐ろしい生け贄の踊りへと変容するはずだ。随ン。新世代における貴重な才能だ。 第2位のシャルル・リシャール=アムラン(カナダ/26歳)もまた、丁寧に作曲家の精神を再現しようとする演奏家。落ち着きのある深くあたたかい音の魅力は、生で聴く価値がある。また、ポーランド審査員勢から圧倒的に高い評価を得て第3位とマズルカ賞を受賞したケイト・リウ(アメリカ/21歳)は、細身の体から豊かで伸びやかな音を鳴らすピアニスト。第4位のエリック・ルー(アメ所で脱臼するリズムは、アメリカやラテンのノリとも違うものだから、ここでデ・ラ・パーラがどんなアプローチをみせるかをチェック。2曲の間に挟まれたショスタコーヴィチ「チェロ協奏曲第1番」では、チャイコフスキー国際コンクールの覇者、アルメニア生まれのナレク・アフナジャリャンがソリストを務める。西アジアの濃厚な歌のテイストが、アメリカ大陸育ちの大らかな気質と化学反応を起こす。そして、オーケストラはパーヴォ・ヤルヴィの首席指揮者就任で勢いを増すわれらがN響だ。 アメリカ、フランス、ロシア、コーカサス、そして日本…。どうやらこのコンサートの隠れテーマは、グローバリゼーション時代の異文化交流のようだ。リカ/17歳)、第5位のイーケ・(トニー・)ヤン(カナダ/16歳)とともに、今後の飛躍が楽しみ。第6位のドミトリー・シシキン(ロシア/23歳)も、ロシアン・ピア二ズムの継承者らしい重厚な音が強いインパクトを残した、スター性のあるピアニストだ。 いずれも、音に確かな個性と魅力があるピアニスト。入賞者が一堂に会し、生の音を味わえる貴重な機会を、お聴き逃しなく。左から:チョ・ソンジン ©Ramistudio.com/シャルル・リシャール=アムラン/ケイト・リウ/エリック・ルー/イーケ・(トニー・)ヤン/ドミトリー・シシキン©grzedzinski/NIFCアロンドラ・デ・ラ・パーラ ©Leonardo Manzo

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です