eぶらあぼ 2015.12月号
39/225

ロームシアター京都プロデュース・オペラベートーヴェン≪フィデリオ≫ (セミステージ形式) 2016年1月、ロームシアター京都が京都・岡崎に開館する。1960年4月の開館以来「京都の文化の殿堂」として京都市民に親しまれてきた京都会館をリニューアルしたもので、長年にわたり音楽芸術を支援してきたローム株式会社が京都市との契約に基づき再整備後50年間のネーミングライツを取得、命名した。1月10日の開館記念公演・記念式典に続き、翌11日にはロームシアター京都プロデュース・オペラ《フィデリオ》でオープニング事業の幕が開く。 「オペラで開幕を祝いたい」という劇場の意向をうけ、計画当初から下野&京響と三浦のタッグでセミステージ形式上演と決まっていたが、演目は下野からの提案だった。「好きなオペラを考えたとき、やはりドイツ語圏のものが好きなんですね。《フィデリオ》はウィーン国立歌劇場が戦後1955年、占領軍から“解放”され再出発したときの演目で、ウィーンの人々や音楽界にとってモニュメンタルな作品。それに、ある意味オペラっぽくないオペラですから固定観念にとらわれずにできるのではないか。オーケストラも主体となる作品で、京響の魅力も楽しんでいただけます」 劇団「地点」の演出では客席を借景に見立てるなど、演じる場所や装置に拘りをみせる三浦。今回もセミステージ形式ながらオーケストラピットも使用する演出手法をとる。 「オーケストラピットがあり、緞帳があがり幕が開く、といったオペラの舞台形式を疑いつつ、新しい形式を模索し既成概念を打ち破る。それが自分のやり方。本公演ではステージにオーケストラと指揮者がいて、その奥で歌手が歌うわけですが、オーケストラピットを地下に見立て、そこで俳優たちが演技をし、その様子が同時中継で映像として流れたりもする。歌手と合唱もピットから上がってきます。通常のオペラと比べ、最初から舞台とオーケストラピットが反転しているというのがこの演出の最大の特徴です」 《フィデリオ》は歌と歌の間に台詞劇を伴うジングシュピール。その上演史を振りかえると、とかく“台詞の問題”がつきまとう。古くはヴィーラント・ワーグナーが1954年、台詞をすべて新作のナレーションに置き換え、最近では2013年、パーヴォ・ヤルヴィ&ドイツ・カンマーフィルが、台詞を全てカット、看守ロッコの回想として一人の語り部に語らせた。三浦も本上演で台詞をどう扱うかを重要視した。 「とにかく台詞が多い。音楽が終わって台詞になった時、テンションが落ちないようにしなければならない。そこで、全体の構成がわかるように台詞を再構築して、劇団『地点』の俳優6人のうちの男女一人ずつが、物語の世界観を通奏低取材・文・写真:寺司正彦下野竜也指揮Shimono TatsuyaProle三浦 基/演出家。劇団「地点」代表。1973年生まれ。1999年より2年間、文化庁派遣芸術家在外研修員としてパリに滞在する。2007年、チェーホフ作『桜の園』にて文化庁芸術祭新人賞受賞。他、2010年度京都府文化賞奨励賞受賞、2011年度京都市芸術新人賞など受賞多数。2012年にはロンドン・グローブ座からの招聘で初のシェイクスピア作品を成功させるなど、海外でも高く評価される。2013年、京都にアトリエ「アンダースロー」をオープン。代表作にチェーホフ作『三人姉妹』、イェリネク作『光のない。』、ブレヒト作『ファッツァー』など。interview ×36

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です