eぶらあぼ 2015.12月号
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188CDCDCDCDショパン:ソナタ第2番・第3番/辻井伸行ホルスト:組曲「惑星」 他/オーマンディ&フィラデルフィア管モーツァルト&シューマン:ピアノ協奏曲/福間洸太朗、山田和樹&横浜シンフォニエッタJ.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ全曲/五嶋みどりショパン:ピアノ・ソナタ第2番「葬送」・第3番辻井伸行(ピアノ)ホルスト:組曲『惑星』ヴォーン=ウィリアムズ:トーマス・タリスの主題による幻想曲、グリーンスリーヴスによる幻想曲ユージン・オーマンディ(指揮)フィラデルフィア管弦楽団 他モーツァルト:ピアノ協奏曲第9番「ジュノーム」シューマン:ピアノ協奏曲福間洸太朗(ピアノ)山田和樹(指揮)横浜シンフォニエッタJ.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータBWV1001~BWV1006五嶋みどり(ヴァイオリン)エイベックス・クラシックスAVCL-25879 ¥3000+税ソニーミュージックSICC-1943 ¥1190+税収録:2014.1/17、フィリアホール,2015.2/1、平塚市民センターホール(ライヴ)日本コロムビアCOCQ-85270 ¥3000+税東京エムプラスOONYX-4123(2枚組) ¥4000+税辻井伸行によるショパンのソナタ第2番・第3番のアルバム。第3番はショパンの閃きと辻井の驚きが呼応し合い、見事な駆動力を生んでいる。1楽章の内声の繊細な歌い回し、2楽章の緩急と音色変化の緊密な連携、3楽章の低音運びの美しさ、4楽章の堂々たる呼吸感——いずれもこのソナタに驚くほど新鮮な息吹と奥行きとを与えている。第2番は3番にくらべ、解釈的にも音質的にもやや硬質だが、それゆえにこそスケルツォや葬送の楽章における中間部で、辻井らしい甘美な表現が光る。謎めいた4楽章の美質を、これほど明瞭に伝えてくれる演奏は今までになかった。(飯田有抄)オーマンディ&フィラデルフィアは、LP時代にその華麗なサウンドで世界中のファンを魅了した人気コンビ。「惑星」は代表盤のひとつで、色彩感も個人技も鮮やか。金管が強めの録音も相まって、華やかな音響が楽しめる。音楽性もきわめて高く、例えば「木星」の有名な旋律は、自然で豊かな抑揚をつけて気高く歌い込み、感動的な名場面を作る。嬉しい驚きだったのは弦楽合奏の名品「タリス幻想曲」。雄大なフレーズ感、深い音色、ソロの歌い回し、いずれも格別。気品と温かみに溢れ、ノスタルジックな美しさに時間も忘れて聴き惚れてしまう。彼らの色褪せない実力を示す、同曲屈指の名演だ。(林 昌英)ベルリンに居を構え世界的に活躍する二人、ピアノの福間洸太朗と指揮の山田和樹のコンビによるフレッシュな新盤が出た。福間の音は一つひとつの粒立ちの中に動的なポテンシャルを秘め、モーツァルト「ジュノーム」では横浜シンフォニエッタの奏でる音楽の上をスタッカートで軽やかにジャンプし、またレガートで美しく滑っていく。シューマンになると力強さは一層増し、表現はさらに振れ幅を広げるのだが、ひと時の感情に流れたり耽美に引きずられることなく、常に程よい爽やかさが保たれているのが魅力だ。フィナーレは活力に満ち、ソロとオケがラストに向かって競うように輝かしいパワーを放出する。(江藤光紀)バッハの無伴奏ヴァイオリン作品は、この楽器を弾く者すべてに提示された挑戦的な難問だ。しかし、「正解」は幾つもある。そのひとつが、当録音だ。各曲での楽章相互のバランスのみならず、全6曲の流れを熟考した理知的な構成。アーティキュレーションや音程の的確さは言わずもがな、通奏低音の繋がりを踏まえた上での4重音も美しく響かせる。さらに、バッハが楽譜上に残した微妙な表記の違いを、独自の解釈ですくい上げる。そして、近年の古楽の成果を採り入れつつも、完全に咀嚼した上で、モダン楽器に適した形で昇華。五嶋という世界的奏者の非凡さを、再認識させる名演である。(寺西 肇)

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