eぶらあぼ 2015.12月号
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186CDCDCDCDヴェルディ:歌劇《アイーダ》/パッパーノ&サンタ・チェチーリア管esprit/森下幸路ソナタ&トランスクリプションズ/セルゲイ・カスプロフメンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲第1番 他/クーベリック・トリオヴェルディ:歌劇《アイーダ》アントニオ・パッパーノ(指揮)アニャ・ハルテロス(ソプラノ)ヨナス・カウフマン(テノール)エカテリーナ・セメンチュク(メゾソプラノ)ローマ・サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団&合唱団 他シュニトケ:古典スタイルによる組曲/プーランク:ヴァイオリン・ソナタ/レスピーギ:子守唄/サティ:右と左に見えるもの、眼鏡なしで/ミヨー:春/メシアン:主題と変奏/タイユフェール:ロマンス 他森下幸路(ヴァイオリン)川畑陽子(ピアノ)スカルラッティ:ソナタK.319・K.87・K.380/ハイドン:ソナタ第31番/ベルク:ソナタ/リスト(ブゾーニ・ホロヴィッツ編):メフィスト・ワルツ/サン=サーンス(リスト・ホロヴィッツ編):死の舞踏 他セルゲイ・カスプロフ(ピアノ)メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲第1番ラファエル・クーベリック:トリオ・コンチェルタンテスーク:悲歌クーベリック・トリオ【石川静(ヴァイオリン)、カレル・フィアラ(チェロ)、クヴィータ・ビリンスカ(ピアノ)】ワーナー・ミュージックWPCS-13257/9(3枚組) ¥4500+税ナミ・レコードWWCC-7794 ¥2500+税アイエムシー音楽出版IMCM-1015 ¥2800+税オクタヴィア・レコードOVCL-00577 ¥3000+税まずはパッパーノの見事な指揮だ。繊細な箇所では歌手にそっと寄り添い、「凱旋行進曲」のようなダイナミックな曲ではメリハリを強調。この山あり谷ありの構築が実に巧みなので、長大なオペラ全曲がまったく弛緩しない。これは優れたオペラ指揮者の手腕だ。歌手たちはこの強固な指揮の下でスタンドプレイに走らずに全く過不足ない歌を聴かせる。ラダメス役のカウフマンはイタリア風とは異なるやや暗めの声質で端正な歌を聴かせ、アイーダ役のハルテロスは特に繊細な箇所で持ち味を発揮する。脇役も水準が等しく高く、総じて新時代の《アイーダ》定盤たりうる優れた出来栄え。(藤原 聡)仙台フィルを経て大阪響の首席ソロ・コンサートマスターを務める森下の、ライヴノーツ・レーベルでの2枚目のCD。まずは、近代フランスとロシアを中心とした、レア曲を含む選曲が光る。レスピーギ、サティ、ミヨー、タイユフェール等の作品は資料的な価値も高いし、比較的有名なシュニトケの作品も国内盤としては貴重だ。てらいなく曲を構成しながら、甘美な音色でチャーミングに歌う演奏もセンス抜群。レアな各曲が耳を傾けるべき佳品たることを十全に知らしめる。ピアノの川畑も絶妙な呼吸で存在感を発揮。全体に楽曲への愛情を感じさせる好アルバムだ。 (柴田克彦)1979年モスクワ生まれのカスプロフは、鬼才アファナシエフが自著『ピアニストのノート』のなかで絶賛しているピアニスト。初来日ツアー中の彼が、いわば名刺代わりにリリースした20代の頃の演奏だ。スカルラッティの細やかなパッセージや低音の響かせ方は、古楽にも精通する彼がモダンピアノの表現力のレンジにおいて、フォルテピアノの生き生きとした音像を拡大してみせるかのようだ。ベルクのソナタは自然な緊張と弛緩に惹き付けられる。リスト「メフィスト・ワルツ」では高度なコントロール力によって、飛翔するような広がりを感じさせてくれる。 (飯田有抄)世界で唯一、チェコの大指揮者ラファエル・クーベリックから、その父で名ヴァイオリニストだったヤン・クーベリックの名を冠することを許された名トリオ。当盤は、社会情勢に翻弄された生涯と、闇の彼方に見え隠れする希望の光を映したラファエルの自作が軸に。3人は技術的な困難を克服するのみならず、複雑なパート譜の向こうに明晰さを捉え、広大な宇宙を形成してゆく。そこへ、メンデルスゾーンが湛えた濃厚なロマンティシズムと、たゆたうようなスークの小品が巧みに共鳴。アルバムに収録された全作品が、三位一体となって訴えかけてくるような、不思議な感覚をもたらす。(笹田和人)

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