eぶらあぼ 2015.11月号
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65上海クァルテット オール・ベートーヴェン・プログラム作風の変遷から見えてくる新しい発見文:寺西 肇An Evening with ディエゴ・エル・シガーラ(フラメンコ・カンタオール)フラメンコ界のフランク・シナトラ、10年ぶりのステージ文:東端哲也11/17(火)19:00 東京文化会館(小)11/18(水)19:00 あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール問 テレビマンユニオン03-6418-8617全国ツアー&マスタークラスなどの詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。http://www.tvumd.com11/27(金)19:00 Bunkamuraオーチャードホール問 カジモト・イープラス0570-06-9960 http://www.kajimotomusic.com 東洋と西洋。そして、過去と未来。その十字路に立つのが、上海クァルテットだ。傑出したアンサンブル能力と音楽性を武器に、彼らのルーツである中国の民謡や現代音楽の要素を採り込みつつ、ヨーロッパ音楽へ東洋の音楽の繊細さを融合させ、室内楽シーンの最先端を走り続けて、結成から32年目を迎えた彼ら。晩秋の来日公演では、ベートーヴェンの偉大な弦楽四重奏曲全16曲のうち、初期の第3番、中期の第11番「セリオーソ」、後期の第15番と、そのエッセンスを抽出したような3曲を披露する。 ウェイガン(ヴァイオリン)とホンガン(ヴィオラ)のリ兄弟を中心に、上海音楽院で結成。1985年、ポーツマス(現・ロンドン)国際弦楽四重奏コンクールで2位入賞を果たし、メニューインに絶賛された。その勧めで渡米し、87年にはシカゴ新人コンペティションで優勝。ジュリアードなど名四重奏団の薫陶を 「フラメンコ」と聞くと、踊り(バイレ)やギター演奏(トケ)のイメージが強いが、これに魂の奥底から響くような深い歌声(カンテ)が加わり、三位一体となってこそが、その真髄。 ディエゴ・エル・シガーラは、今世界で最もエキサイティングで革新的なカンタオール(男性の歌い手)のひとりであり、21世紀の音楽の海を渡る冒険家だ。かつて東方からスペイン南部のアンダルシア地方にやってきてフラメンコの発展に寄与した「ヒターノ」(いわゆるロマ)の流れを組む彼は、“フラメンコ界のフランク・シナトラ”と呼ばれる逸材で、大西洋をまたにかけて、大胆にジャンルをクロスオーヴァーすることでも賞賛を集めてきた。 2003年にリリースした、キューバの国宝級ピアニスト、故ベボ・バルデスとのコラボ作『ラグリマス・ネグラス(黒い涙)』をはじめ、これまで4度のラテン・グラミー受賞に輝き、特にエレクトリック・受け、世界的トップ・アンサンブルへと急成長した。その後は古典から新作初演まで幅広く手掛け、巨匠音楽家とも共演を重ねている。 ベートーヴェンを「特別な作曲家」と位置付ける彼ら。今回披露する3曲について「それぞれの時期に特有の作曲法や個性の違いを反映させている。曲ごとに、新しい発見をしていただければ」と、メンバーのイーウェン・ジャン(ヴァイオリン)。「世界は悲しく、混沌ギターのディエゴ・ガルシアとの共演による最新作『トゥクマンの月のロマンセ』(13年)では、アルゼンチン・タンゴの伝統に新しい風を巻き起こしている。 そんな彼の、05年「愛知万博」以来10年ぶりとなる来日公演がついに実現すとした状況に直面している。そんな危機の中でも、音楽には人々の心をひとつにし、深い痛みを癒す力があると信じる。私たちは音楽家として、それを担う使命がある」と語る。る。ラテンジャズ・サウンドを織り交ぜつつ、フラメンコ特有の妖しい魂の叫び声を通して、キューバやアルゼンチンのフォルクローレに新しい生命の火が灯される瞬間を、11月末のBunkamuraオーチャードホールでぜひ目撃して欲しい。

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