eぶらあぼ 2015.11月号
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60©Toshiaki Yamada中井恒仁&武田美和子 ピアノデュオリサイタル “ピアノの芸術” vol.111/19(木)19:00 東京文化会館(小)問 プロアルテムジケ03-3943-6677 http://www.proarte.co.jp中井恒仁&武田美和子(ピアノデュオ)デュオの決め手は“阿吽の呼吸”取材・文:高坂はる香Interview デュオを組むようになって16年。幅広いレパートリーでピアノデュオの新境地を切り拓く中井恒仁&武田美和子が、“ピアノの芸術”と題したシリーズを始める。 (中井以下:N)「新シリーズでは、ソロからオーケストラ作品の編曲ものまで、ピアノで表現できるさまざまな作品を組み合わせ、芸術と呼べるようなステージを創りたいと考えています」 (武田以下:T)「多くの作品に取り組む中で、デュオとは本当に様々なことができると手ごたえを感じています。ダイナミックな表現、緻密な表現など、手が4つあることでピアノの可能性は大きく広がります」 シリーズ初回(vol.1)では、演奏を積んだ二人の得意曲であるルトスワフスキの「パガニーニの主題による変奏曲」、ショスタコーヴィチの「2台ピアノのための組曲」を取り上げる。 T「ショスタコーヴィチが父親を亡くし、落胆していた15歳の頃の作品ですが、あふれるような創作への思いが感じられます」 N「厳かで壮大な響きがしますが、旋律や和声も魅力的。そんな若さで書かれたとは思えません。シンプルな音の組み合わせからも独特な美しい響きを生み出し、構成力を持って曲の良さをいかに伝えられるかがポイントです」 そして、今回二人が演奏することを最初に決めていたのは、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」。作曲者自身による連弾編曲版だ。 N「録音技術が発達していなかった時代は、作品を紹介したり楽しんだりするために、オーケストラ曲の連弾版がよく演奏されていました。『新世界より』は、故郷への想いを根底に、音楽がドラマティックに発展する作品です。美しいメロディが次々と現れ、もとはオーケストラ作品であるにもかかわらず、即興的な要素も感じます」 T「ピアノデュオは自由で小回りがきくので、相手に合わせて即興的な表現をするのに最適です。とくに連弾は、奏者の耳が物理的に同じ方向を向いているので、二人の集中が一つの楽器に集まり、瞬間的に音楽を創り上げるにはとても良いんです」 今やその“阿吽の呼吸ぶり”は二人にとってあまりに自然なもの。そのため逆に、それが特別なことだと改めて気づく瞬間もあるのだという。 N「デュオの指導中など、たまに相手が変わって弾く時に、改めて、僕たち夫婦が打ち合わせもなく、呼吸や頭の中の音楽のイメージを合わせていることを実感する時はあります」 T「やりたいと思う音を出すと、彼は瞬時にそれを受け止めてくれるので、大きな安心感があります。だからこそ、どこまでもいろいろな表現に挑戦できるのかもしれませんね」 シリーズの今後は未知数。二人で何ができるか、常にアイディアを出し合っているとか。ピアノの表現の可能性に挑むこれからに期待しよう。12/26(土)15:00 Hakuju Hall問 Hakuju Hallチケットセンター03-5478-8700 https://www.hakujuhall.jp迫 昭嘉(ピアノ)の第九 Vol.12台ピアノ版「第九」を年末恒例イベントに!文:長井進之介迫 昭嘉 ©Akira Muto 迫昭嘉は、国内外でソロ、アンサンブル両方の分野で幅広い演奏活動を展開し、近年は指揮活動でも高い評価を得ているピアニスト。ベートーヴェンのピアノ・ソナタのツィクルス演奏会、さらに全集の録音が各方面から絶賛を得るなどベートーヴェン演奏に定評がある彼が、「第九」の2台ピアノ版(リスト編曲)を引っ提げ、年末の“「第九」ラッシュ”に名乗りを上げる。今回の公演以降、毎回ゲストを招き、2台ピアノによる「第九」と共に「+α」の作品を演奏していくという。今回の共演者の佐々木崇は、抒情的な演奏と美音が高く評価されており、博士の学位も取得した知性派ピアニスト。管弦楽の響きにも負けない迫力の「第九」と共に迫がソロで演奏するのは、美しい音色による繊細な表現、卓越した独創性が求められるベートーヴェンのピアノ・ソナタ第30番。会場となるHakuju Hallは、演奏者と聴衆の一体感を楽しめる300席の空間。力強さと繊細さのコントラストを間近で感じてほしい。

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