eぶらあぼ 2015.11月号
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58©Hiroaki Seo第3回 アート×アート×アート 能×現代音楽×ファッション 《Nopera AOI 葵上》12/14(月)19:00 Hakuju Hall問 Hakuju Hall チケットセンター03-5478-8700 https://www.hakujuhall.jp青木涼子(能アーティスト)“謡”を新しい“音楽”にするチャレンジ取材・文:宮本 明Interview 日本の能を現代音楽の分野で展開するアーティスト、青木涼子。能と音楽のコラボレーションというと、能の「舞」の要素が着目されがちだが、能は舞と謡(うたい)が一体になった歌舞劇。青木は「謡」をクローズアップして、新しい芸術を模索しつづけてきた。 「演劇界では、鈴木忠志さんやピーター・ブルックといった演出家たちが、能にインスパイアされた新しい舞台を創っています。でも音楽では、音に舞を合わせるようなものばかり。謡の部分を新しい音楽にしていかなければと考えました。邦楽器のための現代音楽はたくさんあるのに、能のために書かれた作品はほとんどない。音楽構造が違いすぎるんです。私たちはピッチ(音程)も要求されないし、リズムも、西洋音楽の基準で計ってしまうとアバウトに見えてしまう」 直接のきっかけは2007年に湯浅譲二の《雪は降る》(1972)という、謡と室内楽の作品の復活上演に参加したことだった。 「初演では、謡の部分が録音だったそうなので、本当の意味でのアンサンブルとは言えなかったと思いますが、謡を音楽として扱った作品はおそらく初めてで、『この方向で突き詰めていけば』というヒントになりました」 作曲家・細川俊夫の協力を得て、世界の作曲家に新作を委嘱した。今年、文化庁から「文化交流使」に任命され、ヨーロッパで現代作曲家のための「公開プレゼン」も実施している。そんな取り組みの中から、「能の新作」ではなく、青木の声を素材にした新しい音楽が生まれている。 12月のHakuju Hallでの公演では、前半にイタリア、ギリシャ、キプロスの3人の作曲家の作品を演奏する。そして今回の目玉が、馬場法子作曲の能オペラ《葵上》。『源氏物語』によるモノオペラだ。気鋭のファッション・デザイナー山縣良和が衣裳を手がける。 「来春パリで世界初演を予定している1時間弱の作品から20分ほどを抜粋して演奏します。馬場さんとは2作目で、前作でも私が扇を開く所作などまで楽譜に指示があったのですが、今回はさらに、衣裳に音が鳴る仕掛けを仕込んで、それを鳴らす動作も含めてスコアに書かれています。たとえば袖を擦ると“シャッ”と音が出るとか。山縣さんはとてもオープンな方で、楽しんでいろんな案を出してくれました」 謡だけでなく所作も伴うことで、青木の目指す「能と音楽の融合」がまた一歩進んだ形で実現することになりそうだ。パフォーミング・アートの面白さは、百聞は一見に如かず。五感の刺激に身をゆだねたい人は必修。12/5(土)19:00 東京文化会館(小)問 プロアルテムジケ03-3943-6677 http://www.proarte.co.jpエルンスト・オッテンザマー(クラリネット)これぞヴィルトゥオーゾ!文:笹田和人 長くウィーン・フィルの首席奏者を務め、卓越した技巧で世界中の聴衆を虜にしてきた名手であり、2人の息子たちも第一線奏者として活躍する、名門クラリネット一族の長、エルンスト・オッテンザマーが12月に待望のリサイタルを開く。ソリストとしても世界中の一線楽団へ客演、ウィーン・ヴィルトゥオーゼンなど室内アンサンブルにも参加し、秀演を重ねて来た名匠であり、ウィーン音楽大学教授として、後進の指導にも精力的に取り組んでいる。 来日公演では、ウィーンに学び、国際的な活動を展開するピアノの村田千佳が共演。サン=サーンスのソナタやシューマン「幻想小曲集」、マルティヌー「ソナチネ」と名旋律はもちろん、ウェーバー「協奏的大二重奏曲」やロヴレーリョ「ヴェルディの歌劇《椿姫》の主題による協奏的幻想曲」、ヴィドール「序曲とロンド」など、超絶技巧もたっぷりと披露。「これぞヴィルトゥオーゾ!」という、贅沢な時間が堪能できるだろう

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