eぶらあぼ 2015.11月号
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5411/3(火・祝)14:00 びわ湖ホール(小)問 びわ湖ホールチケットセンター077-523-713611/13(金)19:00 紀尾井ホール問 AMATI 03-3560-3010CD『サン=サーンス:ヴァイオリン・ソナタ第1番 他‒フレンチ・ヴァイオリン・ワークス‒』オクタヴィア・レコードOVCL-00579(SACDハイブリッド盤) ¥3200+税11/20(金)発売小林美樹(ヴァイオリン)盤石のサポートで奏でるフランス音楽の精髄取材・文:柴田克彦Interview 2011年ヴィエニャフスキ国際コンクールで第2位獲得後、リサイタルや協奏曲で活躍を続ける気鋭のヴァイオリニスト・小林美樹。11月に3枚目のCDをリリースし、発売記念リサイタルも行う。 CDは「1枚目がロシアもの、2枚目がドイツものだったので、今回はフランスの作品」でまとめた。 「13年に室内楽でご一緒して以来、デュオでの共演を望んでいた田村響さん(07年ロン・ティボー国際コンクール第1位)にピアノをお願いできましたので、まずは本格的なソナタを録音したいと考え、新たな挑戦の意味も込めてサン=サーンスのソナタ第1番をメインに据えました。あとは主に今まで弾いてきた曲の中から、ピアノ版の録音が少ないショーソンの『詩曲』に、技巧的なイザイとラヴェル、美しいフォーレとマスネの小品を加えました」 なかでもサン=サーンスは「ぜひ聴いて欲しい!」と力が入る。 「華やかで色彩感があって、フランスの風のようなニュアンスも含まれたお洒落な作品。ピアノ・パートがとても凝っているのですが、田村さんは素晴らしい演奏をしてくださいました。彼は音色が美しく、表現力が豊かで、人柄も素敵な音楽家。音の多いこの曲をまろやかな音色で包み込んでくれましたし、第4楽章のクライマックスも二人同時に形作ることができました」 「オーケストラ版よりもピアノ版に惹かれる」と語るショーソンも注目の1曲。 「私は、音の動きが明解なピアノ版の方が、曲をより魅力的に表現できると思っています。録音の際には雑音を排除するために最小限の照明で演奏するのですが、楽譜だけが照らされた暗闇の中に、キラキラしたピアノが聴こえてきたのです。それはまさに至福のときでした」 リサイタルは曲目が少し異なる。 「せっかく田村さんと生で共演できるので、サン=サーンス以外にも本格作を入れようと思い、フランクのソナタを加えました。他はバランスを考えて、最初にフランス音楽と相性の良いロシアのチャイコフスキー『懐かしい土地の思い出』、最後にラヴェルの『ツィガーヌ』を置きました」 何れも「かなり弾いてきた」作品だ。 「フランクのソナタは、内にこもった情熱で魅了する名曲。技巧的なアピール度が高いサン=サーンスと並べて、同じフランスものでありながら対照的な2つのソナタの違いを、興味深く聴いて頂きたいと思います。『ツィガーヌ』は、様々な奏法が盛り込まれた、聴いても弾いても楽しい作品です」 今後は「無伴奏のリサイタルやベートーヴェンのソナタ全曲にも挑戦したい」と語る彼女。新譜を聴くと思わず引き込まれるし、生演奏にも触れてみたくなる。将来も楽しみだが、今秋はフランスもので魅力を味わいたい。11/11(水)19:00 王子ホール問プロアルテムジケ03-3943-6677http://www.proarte.co.jp新居由佳梨 ラヴェル ピアノシリーズ(最終回) Vol.3 プリズムを求めてシリーズのラストは連弾も交えて華やかに文:渡辺謙太郎©ミューズエンターテインメント ソロ、室内楽、教育など、多岐にわたって活躍中のピアニスト・新居由佳梨。彼女が最も敬愛する作曲家ラヴェルをテーマにしたピアノシリーズが11月に開催される「Vol.3」で最終回を迎える。 前半は2013年リリースのラヴェル名曲集『透明な風』の収録曲が中心。「前奏曲」や「水の戯れ」などを、彼女の持ち味である清冽かつ構築性の高いピアニズムで紡ぎ上げる。後半は当シリーズ初の連弾。共演は新居の東京芸大時代の先輩で、スイス留学中は同じ師(ドミニク・メルレ)にも学んだ橘高(きつたか)昌男だ。「マ・メール・ロワ」「スペイン狂詩曲」という色彩豊かな傑作をとりあげる。この両曲は作曲者の性格やルーツにも深い関わりがある。前者は子供好きのラヴェルが友人の2人の子供に捧げ、後者はスペイン系バスク人の母親が彼の幼少期に歌っていた民謡から強い影響を受けているのだ。まさに当公演のテーマ「プリズムを求めて」にふさわしいプログラム。透明で多様な輝きを放つ演奏が期待される。

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