eぶらあぼ 2015.11月号
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40ドミンゴ・インドヤン(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団「第九」以外で年末に聴きたいシンフォニーは?文:オヤマダアツシ都響・調布シリーズ No.17ポール・メイエ(指揮/クラリネット) 東京都交響楽団名音楽家が2つの顔で魅せる至福の午後文:柴田克彦「第九」特別演奏会2015~あなたが選ぶ交響曲12/19(土)14:00 Bunkamuraオーチャードホール12/20(日)14:00 サントリーホールあなたが聴きたい交響曲コンサート201512/21(月)19:15 すみだトリフォニーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 http://www.njp.or.jp12/6(日)14:00 調布市グリーンホール問 都響ガイド03-3822-0727 http://www.tmso.or.jp 12月といえば「第九」のシーズンだが、1曲だけの演奏なのか「前プロ」と呼ばれる別な曲も演奏されるのかも気になるところ。同じベートーヴェンの序曲などであることが多いものの、新日本フィルハーモニー交響楽団はちょっとした冒険に出た。定期演奏会などに来場した聴衆からリクエストを募り、その投票数で「第九」の前プロを決めようというものだ。締め切りは本誌発行後の10月末だが、この原稿執筆時(10月初旬)ではモーツァルトの「ジュピター」交響曲がトップを走っている。このまま決まれば、図らずも18世紀から19世紀へ至るウィーン音楽の伝統を追体験することにもなり、モーツァルトとベートーヴェンの関係を再認識できるかもしれない。 さらにはこの人気投票システムにより、もうひとつのコンサートも行われる。『あなたが聴きたい交響曲コンサート2015』と題されたこちらは、選出され 通常の定期とはひと味違った演奏家や演目が目を引く、都響の調布シリーズ。今年12月は、世界のトップに立つクラリネット奏者にして指揮者ポール・メイエが、“両面の技”で魅了する。1965年フランス生まれの彼は、完璧な技術、芳醇かつ高貴な音色、豊かな表現力を併せ持ったソロ奏者として活躍を続け、スーパー・アンサンブル「レ・ヴァン・フランセ」の中心メンバーとしても名を馳せている。また指揮者のキャリアも着実に築き、ヨーロッパやアジアの各楽団に客演を重ねるほか、2007~09年にはチョン・ミョンフンの薦めでソウル・フィルの准首席指揮者、10~12年には東京佼成ウインドオーケストラの首席指揮者を歴任。なかでも佼成ウインドで聴かせたモーツァルトの「13管楽器のためのセレナード」は、彼の美質が最高に発揮された名演として、いまだ忘れ難い。 今回のプログラムは、モーツァルトとた2つの交響曲がそのままコンサートに。やはり10月初旬の時点ではドヴォルザークの「新世界より」とブラームスの交響曲第1番がツートップとなって票を伸ばし、マーラーの交響曲第1番が2位を僅差で追い上げているような状況だ。このまま逃げ切りか、巻き返しはあるのか、集計の結果が出るのは10月末だ。 これらのコンサートを指揮するのが、あのドゥダメルを生んだベネズエラの「エル・システマ」出身であるドミンゴ・インドヤンであることにも注目したい。誰もが知る名曲だからこそ、新しい才能を探し出すチャンスでもあるのだ。メンデルスゾーンの名曲選。まず前者のクラリネット協奏曲の吹き振りが、メイエならではの聴きものとなるのは言うまでもない。この天上的なまでに美しい名作を、気品に満ちた彼のクラリネットで聴けば、夢心地の陶酔必至。指揮者として特徴的な柔らかみのある音作りも強い味方となる。後者は共に代表作の序曲「フィンガルの洞窟」と交響曲第4番「イタリア」。ここでは北国の海と南国の陽光の対比が妙味を成しており、メイエのハイセンスなリードと都響一流の立体的サウンドで描かれる名画的な表現に期待が集まる。 “光と翳”が同居したチャーミングなプロで、素敵な休日の午後を過ごそう!ドミンゴ・インドヤンポール・メイエ ©Vandoren Edith Held

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