eぶらあぼ 2015.11月号
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38山本直純Photo:Yoshihiro Kawaguchiオペラ《滝の白糸》11/15(日)16:00 石川県立音楽堂コンサートホール問 石川県立音楽堂チケットボックス076-232-8632 http://www.ongakudo.jp千住 明(作曲)日本のオペラの新たな鼓動取材・文:宮本 明Interview 「これまでの仕事のすべてがこのオペラに活きています。テレビや映画の音楽をやってきて本当によかった。音楽で、どのように人を惹きつけながら、どのように物語を紡いでいくのか。その音楽の作り方について、世界中の作曲家の中でも、たぶん僕は結構長けているほうだと思うのです」 確かな自信を語る作曲家・千住明。昨年1~2月に金沢と東京で初演したオペラ《滝の白糸》が早くも再演される。 「幕が降りたあとの客席の水を打ったような静けさとすすり泣き。われながら、驚きました。人を無垢な気持ちにして感動を与えるというのは、意図してもなかなかできないことなんです」 オペラへの意欲には並々ならぬものがある。 「先輩たちが守ってきた日本のオペラを、新たな活性化も含めて継承していくのが自分の役目だと思っています。30年間、ずっと人の注文に応える仕事をしてきて、やっと自分から発信する場所に立てた。だからこそ、新たなオペラの発信を考えたりするなど、なんらかのアクションを起こそうと考えています。その一歩が、間違いなくこの《滝の白糸》なんです」 これまでに培ってきたネットワークを活かして、音楽、美術、衣装はもちろん、プランナーや映像作家など、さまざまなアーティストたちと協働して、オペラの“新しい波”を生みたいと力強く語る。 「オペラはエンターテインメントであると思います。歌舞伎も宝塚も劇団四季も、それぞれより活気のある世界を努力して切り開いてきました。たとえば、日本のオペラなので、ホワイエで和食や日本酒を提供するなんていうのもいいと思いませんか?」 オペラ《滝の白糸》の原作は泉鏡花の小説『義血俠血』。映画化・舞台化も多い名作だ。水芸の女太夫・滝の白糸がある日出会った男に捧げる、静かだが燃えるような愛。そして、その愛ゆえに堕ちていく彼女の献身的な愛に、自らの命をもって応える男。台本を手がけたのは俳人の黛まどかだ。 「黛さんの言葉の力がすごいです。よく研いだナイフのよう。可能な限り余計なものを削ぎ落とした、素晴らしい歌になっています」 人の心へとダイレクトに訴えかける千住の音楽が、主人公二人の宿命を悲しく彩る。題名役の中嶋彰子ら、ほとんどが初演と同じキャストながら、音楽は初演のスコアにかなり手直しを加えた改訂版での上演だ。今回は金沢のみでの公演となり、かなり貴重。千住明の、日本のオペラの新たな鼓動を共有するために、さあ北陸へ。11/10(火)19:00横浜みなとみらいホール問 横浜みなとみらいホールチケットセンター045-682-2000http://www.yaf.or.jp/mmhグレート・アーティスト・シリーズ vol.3 山本直純“日本のバーンスタイン”を称えて文:宮本 明 楽壇の先人に光を当てる横浜みなとみらいホールの好企画第3弾は、指揮者・作曲家の山本直純(1932~2002)。齋藤秀雄門下で小澤征爾の兄弟子。国際的指揮者としての知名度は小澤に譲るとしても、お茶の間に楽しく音楽を浸透させた功績では山本に軍配があがるだろう。映画『男はつらいよ』や、「一年生になったら」などの子供の歌、チョコレートのCM「大きいことはいいことだ」。そして司会も務めた伝説のクラシック・バラエティ『オーケストラがやって来た』。幅広いフィールドでの痛快な奮闘ぶりは、いわば日本のバーンスタイン!といっても過言ではないだろう。 その全仕事のエッセンスを凝縮した魅力的な音楽会を指揮するのは、直純の次男でチェロ奏者でもある山本祐ノ介。スコアが失われていた楽曲も、今回のために彼が耳コピで掘り起こしたとのこと。1976年から78年まで『オーケストラがやって来た』のアシスタントだったマリ・クリスティーヌが司会を務める。ゆかりの人々が集い、賑やかに足跡を振り返る、懐かしくあたたかい一夜。

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