eぶらあぼ 2015.11月号
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36尾高忠明(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団十八番のイギリスものとシューベルトの高貴な味わい文:山田治生第676回 東京定期演奏会12/11(金)19:00、12/12(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 http://www.japanphil.or.jp 今年3月に札響音楽監督の任期を終えた尾高忠明の在京オーケストラへの出演が続いている。桂冠指揮者などの肩書きを持つ東京フィル、N響、読響へ登場したほか、新日本フィルや東京シティ・フィルの定期演奏会に客演し、得意のイギリス音楽やシベリウスの作品を披露した。この12月には約5年ぶりに日本フィルの東京定期演奏会を振り、日本フィルの団員をソリストに立てて20世紀イギリスの協奏曲を取り上げる。 BBCウェールズ・ナショナル管の桂冠指揮者を務めるなどイギリスでのキャリアが長い尾高は、イギリス音楽の紹介者としても知られる。フィンジの「クラリネットと弦楽のための協奏曲」では同団首席奏者の伊藤寛隆が独奏を務める。1949年に完成されたこの協奏曲は演奏の機会が多くないがロマンティックでたいへんに魅力的な作品である。ヴォーン=ウィリアムズの「バス・テューバと管弦楽のための協奏曲」でソロを担うのは同団の柳生和大。テューバ協奏曲のなかでは最も著名といえるこの作品ではテューバの歌う楽器としての魅力が満喫できる。 後半にはシューベルトの交響曲第8番「ザ・グレイト」が置かれた。尾高は若き日にウィーン国立音楽大学でハンス・スワロフスキーに師事するなど、ウィーンとのつながりも深く、シューベルトの音楽にも特別の愛着を寄せる。円熟味を増すマエストロ尾高と近年好調の日本フィルとの共演がとても楽しみである。伊藤寛隆 ©山口 敦広上淳一(指揮) 水戸室内管弦楽団名匠たちが奏でるモーツァルトとハイドン晩年の傑作文:江藤光紀第94回 定期演奏会11/20(金)19:00、11/21(土)14:00 水戸芸術館コンサートホールATM問 水戸芸術館チケット予約センター029-231-8000 http://arttowermito.or.jp 芸術文化に関して「東京には何でもある」という言葉はあながち嘘ではないが、水戸室内管が聴きたいなら水戸に向かうよりない。上野から特急で1時間。でもそれはきっと報われる小遠征になるだろう。国内のみならず、ホルンのラデク・バボラークやオーボエのフィリップ・トーンドゥルをはじめ、世界から最高峰のメンバーを集め、水戸だけのオリジナル・プログラムを、わずか700席の臨場感あふれるホールで上演する。最高の贅沢を味わうには相応の手間もかかるというものだ。 さて94回目となる同団定期は、なんといってもモーツァルトのピアノ協奏曲第27番を弾くソリストのメナヘム・プレスラーに注目だ。1923年生まれだから、今年92歳。世界中でリサイタルやマスタークラスを開き、昨年は庄司紗矢香とのデュオでも新境地をみせた。つまりバリバリの現役なのだ。重みのある硬質のタッチに“枯れ”の気配はみられず、人間の能力は無尽蔵であるということをつくづく実感させてくれる。その元気ももらってこようではないか。 プログラムは、ほかにハイドンの交響曲第102番、モーツァルトの「ジュピター」交響曲と、この規模のオーケストラが一番美しく鳴る古典派で固められているのが嬉しい。前回からメンバーに加わったヴァイオリンの竹澤恭子が今回も参加ということで、パワーアップしたアンサンブルも盤石だ。 今回タクトをとるのは、3回目の客演となる広上淳一。音楽本来のリズムを殺さないリードをする指揮者だから、ソリスト集団の生み出す、うねるような流れにしっかりと道をつけてくれるはずだ。メナヘム・プレスラー ©Alain Barker広上淳一 ©GregSailor柳生和大 ©山口 敦尾高忠明 ©Martin Richardson

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